統計解説

拮抗する対中、対米輸出額 国内生産への影響が大きいのは?

経済波及効果大きい輸送機械中心の米国に軍配

 
 経済解析室では、これまで米国向け出荷の動向や中国向け出荷減少の国内生産活動への影響についての分析結果を紹介してきたが(参考)、今回は米国向け・中国向け輸出の国内生産への影響についての分析を紹介する。

抜きつ抜かれつの様相

 日本から米国向けの輸出額を見ると、2006年に過去最高の16.9兆円を記録したものの2008年のリーマンショックの影響を受け大幅に低下している。その後米国向け輸出は徐々に回復するなかで、日本からの最大の輸出先は米国と中国で何度か入れ替わっている。
 リーマンショック後の2009年に中国向け輸出が米国向けを上回ったが、その後米国向け輸出額は回復し、2013年には再び中国向け輸出額を上回った。
 2018年には中国向け輸出額が過去最高となり、米国向け輸出額を上回ったが、2019年に再び米国向け輸出額が中国向け輸出額を上回り両国の輸出額は拮抗している。

「米国向け」が上回る

 ほぼ同じ規模の米国向け輸出、中国向け輸出だが、国内生産への経済波及効果で見ると、どちらが大きいのだろうか。
 直近2019年の米国及び中国の輸出額を見ると、米国向け輸出額は15.2兆円、中国向け輸出額は14.7兆円と、米国向け輸出額が0.5兆円上回っているもののほぼ拮抗している。
 2015年基準の産業連関表を用いて、米国向け輸出・中国向け輸出それぞれの国内生産への波及効果を試算すると、米国向け輸出が国内生産に与えた経済波及効果は15.8兆円、中国向け輸出が国内生産に与えた経済波及効果は12.6兆円となり、米国向け輸出が国内生産へ与えた経済波及効果は3.2兆円上回る。

産業の裾野の広さゆえ

 ほぼ同じ規模の輸出額だが、なぜ米国向け輸出の方が経済波及効果が大きいのだろうか。
 ここで、産業連関表に基づいて算出した生産誘発額(注1)により業種別に輸出額と当該業種の輸出により生じた国内生産への経済波及効果を見てみよう。米国向け輸出の主力業種は輸送機械だが、裾野の広い輸送機械は国内産業への影響力が高いため、輸出額に対する経済波及効果が大きくなっている(影響力係数(注2) 1.41)。
 他方、中国向け輸出の主力業種は電気機械だが、輸出額に対する経済波及効果は、輸送機械と比較すると小さくなる(影響力係数1.08)。
 このため、米国向け輸出が中国向け輸出よりも国内生産へ与える経済波及効果が大きいことがわかる。

(注1)生産誘発額とは、輸出される貨物を生産するために直接・間接的に使用する貨物を生産するといった繰り返し誘発される生産が究極的にどのくらい生産されたかを示したもの。

(注2)影響力係数=産業連関表の逆行列係数の列和/逆行列係数の列和全体の平均値。ある産業の最終需要が増えた際に他の産業へ与える影響(数値が大きいほど他産業へ与える影響が大きい)。

最近の米国向け輸出と中国向け輸出の動向を月次で見ると、中国向け輸出は2018年末より前年同月比低下が続いている一方、米国向け輸出は2019年7月まで前年同月比上昇と好調が続いていた。
 しかし、米国向け輸出も2019年8月より前年同月比低下に転じており、輸送機械の低下が主な要因とみられる。この米国向け輸出の減少は今後も続くのか、国内生産に及ぼす影響の観点からも気になるところでである。

【関連情報】

輸出向けで唯一好調な米国向け出荷。今後も続くか?(2019年8/20掲載)

中国向け出荷の減少は、日本国内の生産活動にどれほどの影響をもたらしたのか?2015年産業関数表を用いて試算してみました(2019/9/5掲載)

中国向け出荷減少による国内生産活動への波及効果;2015年産業関数表による試算(2019/9/5掲載)