地域未来

ロール・シャフト通じ日本のものづくり支える百年企業

小出ロール鐵工所 事業継承の軌跡

ロール表面の精度などを確認するベテラン技術者


 国内唯一のロール・シャフト専業加工メーカーである小出ロール鐵工所。製鉄・非鉄向けの圧延ロールが売上高の約7割を占め、とりわけ鉄鋼用圧延ロールの研磨加工では右に出る企業がないといわれるほど。日本のものづくりを下支えする百年企業として技術力はもとより、経営理念を継承してきた裏にはどんな軌跡があるのだろうか-。

大手企業と直接取引

 歴史は第一次世界大戦開戦直後の1914年にさかのぼる。現社長である小出明治氏の曽祖父・源次郎氏が機械加工専門業として創業。その後、エンボスマシンメーカーとして事業展開してきたが、小出明治社長の父で3代目の惠勇氏がエンボスマシンの部品の一つであるロールに事業を特化。この決断が同社の将来を大きく変えることとなる。
 時代は高度経済成長期。製鉄所や製紙会社が関東近辺に乱立するようになり、惠勇氏はこれら企業との強いパイプを構築。「当時30人程度だった中小企業が、大手鉄鋼メーカーなどとの直接取引を実現させた先見の明は、わが父ながらたいしたものだと思います」(小出社長)。製造設備を増強し、ロール専業としての快進撃が始まった。

産業構造の変化に直面

 ロール専業に事業転換した当初は修理業務を中心としてきたが、技術開発力の向上に伴って、OEM(相手先ブランド)による製造など事業領域を広げてきた。
 現社長の明治氏は、大学卒業後、メーカー勤務を経て1990年に27才で同社に入社。高度成長とともに歩んできた父の時代と事業環境は大きく異なり、バブル経済の崩壊や日本の産業構造の変化といった厳しい現実に直面する。痛感したのは、これまで同社の事業を支えてきた鉄鋼や製紙業界向けにとどまらず、採用分野の多角化を図る必要性。景気後退に伴い主力だった鉄鋼や製紙業界からの受注が激減し、「敷地内の在庫が少なくなり、地面が見えるほどだった」と、当時を振り返る。このまま、従来の顧客だけに頼っていては衰退していくという危機感から産業機械やエネルギーなどこれまで接点の少なかった産業分野への営業活動に奔走した。

4代目社長である小出明治氏


 並行して、現場のさらなる技術力向上にも力を注ぐ。新たな評価制度を導入し、指導する側が、一人ひとりの熟達度を客観的に把握できるようにした。国家技能検定の取得の推奨や製造部門の教育体制の充実に加え、より高度な加工技術を追求する姿勢が、発電機用などの大型タービンシャフトの受注をはじめ新たな事業領域の開拓につながった。これらは、それまで以上に高い精度や検査レベルを要求される難易度の高い仕事であるが、技術指導などを通じ、顧客との信頼関係が構築され継続的な受注につながっている。また最近では新たな事業展開として、移動式三次元測定機を駆使して製品の構造を分析するリバースエンジニアリング事業を展開している。

「交換研修」通じ経験積む

 2年前からは近隣の同業他社との“交換研修”にも乗り出した。研修期間は1カ月。互いに設計など一連のオペレーター業務を経験し、終了後は身につけた業務など研修先での体験を社内で発表する場も与え、次代を担う人材育成に注力する。
 時代や産業構造の変化に応じて独自技術の活躍領域を見極め、これを支える人材を育ててきた同社。次の100年に向けた挑戦はもう始まっている。

【企業概要】
▽所在地=千葉県習志野市東習志野6の21の8▽代表者=小出明治社長▽創業=1914年▽=売上高20億300万円(2019年2月期)