統計解説

ドラッグストアにみる外国人観光客の消費インパクト

魅力ある商品に財布の紐は引き締めず

 

 ドラッグストアの販売額は、近年上昇を続けている(左上グラフ)。右上のグラフで商品別の寄与度を見ると、最も大きいのは食品である。ドラッグストアの中でも、食品の品揃えが豊富な郊外の大型店舗はスーパーと、オフィスワーカーなどの需要を見込んで弁当やホットスナックも取り扱う都市部の小型店舗はコンビニエンスストアと競合するが、経済産業省の商業動態統計調査が「ドラッグストア」として調査集計を開始した2014年以来、販売額が4年連続して前年比プラスが続いており、最も勢いのある業態だ(2018年小売業販売を振り返る;少し上向きの動きが続く2018年の小売業販売の動向を振り返ります。 )。

 食品に次いで寄与度が大きいのはビューティーケア(化粧品・小物)、家庭用品等に次いでOTC医薬品が4番目の大きさだ。「ドラッグストア」だけあって、医薬品・化粧品等の寄与度も大きくなっている。そこで、商業動態統計調査の業種別集計から、医薬品・化粧品小売業の販売額を見てみよう。販売額前年比を数量要因と価格要因に要因分解したのが上のグラフ。前年比が上昇している主な要因は数量要因の寄与によることがわかる。医薬品・化粧品の販売量は確実に増えてきていたようだ。

インバウンド需要、売り上げに貢献

 近年、ドラッグストアで、訪日外国人観光客向けのサービスとして中国語など外国語で書かれた広告や、免税カウンター、各種決済サービスを利用できるレジや、外国語で応対する店員の方を目にすることも多いかと思う。訪日外国人消費額が最も大きな国は中国(含む香港)で、消費額の約34%を占めるが(訪日外国人消費動向調査<観光庁>)、訪日中国人のうち、実に約90%、訪日香港人のうち、約75%がドラッグストアで買物をするようだ。(訪日旅行データハンドブック2018年<日本政府観光局>)。では、ドラッグストア側から見て、インバウンド需要はどれほど売上に貢献しているのだろうか。

 まず、訪日外国人による医薬品・化粧品等(トイレタリー、健康グッズ、香水も含まれます)の買物額の推移を見てみよう。上のグラフで塗りつぶした部分がそれに該当するが、右肩上がりで上昇している。訪日外国人消費全体が低下した2016年後半頃には、医薬品・化粧品等の買物額も低下したものの、2017年には再び上昇し、2018年は通年で6,413億円だった。
 次に、訪日外国人の購入額がドラッグストアにおける同商品群の販売額に占める割合を試算したのが、上の折れ線グラフである(右軸)。訪日外国人が医薬品・化粧品等をドラッグストアから購入する割合のデータは存在しないため、その割合が100%、50%、25%の3つのケースについて試算した。特に化粧品には百貨店でしか販売していない商品もあり、全てをドラッグストアで購入しているとは考えにくいが、仮に、50%をドラッグストアで購入しているとしても、そのインパクトは10%と、それなりに大きな影響を持つことがわかる。

為替の影響小さい安定顧客

 以前、訪日外国人の家電等の買物額について分析した際には(ひと言解説「家電大型専門店の新たな顧客がもたらす消費インパクト」)、訪日外国人消費額の多い国・地域の自国の為替レートが円に対して強い時期に、家電等の買物額が増えることがわかった。医薬品・化粧品への為替の影響度合いはどうだろう。

 右上のグラフを見ると、医薬品・化粧品等も、訪日外国人の自国の為替レートが有利になった2015年頃(左上グラフ)に買物額が急上昇している。しかし、その後為替レートが不利になると共に買物額が減少した家電などと異なり、医薬品・化粧品の買物額は増加している。

 買物額の変動を、購入者単価と購入者数とに要因分解して見てみよう。右上の家電などのグラフは、訪日外国人にとって為替が不利になった2016年あたりは、購入者数も、購入者単価もマイナスとなっている。特に、購入者単価の大幅なマイナスが、購入額前年比マイナスの主な要因のようだ。これに対して、左上の医薬品・化粧品などのグラフは、この頃、購入者単価はややマイナスになっているものの、購入者数が増加し続けており、購入額前年比もごく小幅なマイナスにとどまっている。つまり、家電などでは為替が不利だと一人当りの購入額が小さくなるだけでなく、購入自体を取りやめる人が多いが、医薬品・化粧品では、財布の紐を引き締める要因にはなるものの、購入を取りやめるまでには至らないようである。
 このように、両者とも、為替レートのもたらす「お得感」が購買意欲に影響することには変わりありませんが、より商品単価が小さいケースが多い医薬品・化粧品等ではその影響は小さく、訪日外国人は安定的な顧客となりつつあるようだ。
 とはいえ、家電の買物額前年比を見ると、為替が特に不利になったわけでもないのに2018年の第2四半期以降マイナスになっている。このことからうかがえるように、訪日外国人観光客の購買意欲を刺激するのは、なんといっても商品の魅力。数少ない訪日の機会に、是非手に入れたいと思ってもらえる商品が、次はどのような商品分野であらわれるだろうか。日本人消費者にとっても楽しみである。

【関連情報】

ミニ経済分析「2018年の訪日外国人消費指数の動き」(2019/7/24)

ミニ経済分析「2018年小売業販売を振り返る」(2019/4/10)

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