政策特集移動革命「MaaS」が拓く未来 vol.6

地域発の実証相次ぐ 自治体が描く将来戦略

交通政策の再構築や観光振興の切り札に

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永平寺町が町内の一部公道で実施する自動運転の小型電動車による実証実験

 MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)を通じ、移動課題の解決に挑む地域や企業を国が後押しするプロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」が始動した。6月21日、都内で開催されたキックオフイベントには、自治体や企業関係者らが多数参加。各地の先進事例が紹介された。根底にあるのは、高齢化が加速する中での地域住民の移動手段の確保や公共交通網を維持といった喫緊の課題。2次交通の充実を通じて観光地への誘客や地域住民の移動促進を実現し、地域経済を活性化したいとの戦略もある。首長や政策担当者の言葉からは、MaaSを突破口に持続可能な地域の未来を切り拓きたいとの思いがにじむ。
 

「移動の最適解」求めて

「地方にとってのMaaSは『移動の最適化』ではなく『移動の最適解』を求めることです」。こう語るのは福井県永平寺町の河合永充町長。24日、同町で始まったのは、ゴルフカートを改装した6―7人乗りの自動運転車で住民や観光客らを輸送する実証実験だ。
 同町ではこれまでも産業技術総合研究所が中心となって、えちぜん鉄道永平寺口駅から永平寺の門前まで約6キロメートルの公道を自動運転の小型電動車で走行する実証実験が行われてきた。しかし、今回の実証は12月までの半年間と長期にわたる。技術や社会受容性はもとより、サービスとしての事業採算性を探る狙いがある。その裏には「公共交通サービスを財政面で支援し続けるには限界がある。持続可能なサービスのあり方を考えなければならない」(河合町長)との問題意識がある。

永平寺町の実証は住民も交えて実施。小学生が下校時に利用した


 
 同町では他にも、リアルタイムで予約可能なオンデマンドバスの運行システム開発も進めている。地域発ならではの着眼点は予約受け付けを、地域にくまなく張り巡らされている郵便局のネットワークを活用する点。地域住民の生活スタイルなど実情に即したモビリティーサービスの創出を目指している。

個々の取り組みを融合・発展

 一人あたりの自動車保有台数が約0.68台と典型的なクルマ社会である前橋市では、公共交通主体の社会への転換を目指す観点から、新たな交通政策を進めている。柱となるのは、基幹交通サービスが担う幹線の明確化と、郊外におけるデマンド交通の導入促進だ。
 基幹交通において同市は、すでに2018年末から19年にかけて、JR前橋駅と上毛電鉄の中央前橋駅間を運行するシャトルバスを自動運転化する実証実験を実施。一般の乗客も利用する営業路線での取り組みとして大きな注目を集めた。一方の郊外ではオンデマンドバスをAI(人工知能)で効率的に運用する取り組みを進めている。

利用者が希望するバス停の間を乗換なしで移動できる前橋市の「ふるさとバス」予約アプリ

 一連の施策を担う大野誠司情報政策担当部長は「これまでの個々の取り組みを融合・発展させていく段階にある」と語る。「MaaSのレベルとしてもさらに高め、最終的に定額制という仕組みも意識していきたい」と語る。

観光客の利便性向上

 この4年あまりで市内に宿泊する外国人観光客が4倍に急増した大津市。琵琶湖畔を宿泊起点として、世界文化遺産である比叡山延暦寺を訪れる観光コースはとりわけ人気を集めているものの、バス、鉄道、ケーブルカーの乗り継ぎは複雑でとりわけ外国人にとっては分かりにくく、所要時間の見込みも立てにくい。複数の移動手段をひとつのサービスとして一体的に捉えるMaaSの発想で観光客の移動の利便性を高め、2次交通の利用ニーズにも応える取り組みが近く始まる。
 同市はすでに2019年3月に中心市街地で自動運転シャトルバスの実証実験を行っており、これに加え、将来はデマンドタクシーや自家用車なども組み合わせる予定だ。
 「比叡山は大津と京都にまたがるだけに、今回の取り組みを周辺自治体にも広げていきたい」。越直美市長は意欲を示す。

比叡山に向かうケーブルカー。乗り継ぎをよくすることでさらなる観光客の増加を見込む

 経済産業省と国土交通省は、スマートモビリティチャレンジの支援対象地域として、これら3市町を含めた28カ所を選定した。これら地域での先進事例や課題について情報共有を進め、新たなモビリティーサービスの普及へ向けたビジネス環境整備を進める方針だ。

※ 最終回ではこうした意欲的な取り組みを国は具体的にどう後押しするのか、さらには今後の課題を考えます。

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