統計解説

アニマルスピリッツ指標にみる企業の生産マインド

先行きは「強気」?それとも「弱気」?

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 経済解析室では、国内で生産される主要製品について、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を主要企業へ調査している。今回は、本年5月初旬に調査した本年5月と6月の生産計画の状況と、5月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

6月の前月比マイナス幅、過去最大

 本年5月の生産計画については、前月比5.6%と大幅な上昇を見込むという結果になっている。この計画どおりに実際に生産されれば、5月の鉱工業生産の実績は、2か月連続の前月比上昇となる。
 6月の生産計画は、この5月計画からマイナス4.2%の低下という生産計画になっている。このマイナス4.2%という低下幅は、比較可能な2015年基準(2013年1月以降)最大の減少幅となっており、仮にこの生産計画どおりの推移だと、6月の生産水準は、5月の大幅な上昇分の大半が打ち消されるまで低下することになる。

 毎回、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしている。今回の調査結果で計算したところ、5月の結果については、前月比プラス1.5%程度の上昇になるという結果だった。

バイアス補正後はどうか

 この生産計画の伸びを本年4月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになる。
 5月は調査結果そのままでみれば、2015年基準での過去最高の水準を大幅に上回る水準まで上昇するという計画だが、この5月計画値に含まれる傾向的なバイアスを補正すると、2018年平均の水準程度に上昇は落ち着くという推計結果となる。
 6月の生産計画は、仮に5月に企業が生産計画値をそのまま達成したとすると、その水準から前月比マイナス4.2%低下し、104.0と5月の大幅な上昇分の大半が打ち消されることになる水準まで低下する計画となっている。実際には、5月の生産が計画値を下回ると、5月に生産できなかった分が6月に生産されることもあるため、現時点では判断が難しい面もあるが、先述の企業の生産計画の上方バイアスを考えると、この104.0よりも低下することが考えられる。

5月は実質的には「強気」の計画だが

 前年実績と生産計画の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となる。
 昨年までは前年実績に比べて高めの生産計画が続いていたが、5月の生産計画は前年同月実績比でマイナス1.2%となっており、4か月連続の低下を見込んでいる。また、6月の生産計画まで見てみると、前年同月実績比でマイナス2.8%となっており、前年同月実績比での低下が続く計画だ。ただ、本年の5月については、ゴールデンウィークが10連休となり、昨年より休日が2日多いことを踏まえると、5月は実質的には強気の計画とみることができる。

 生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べているので、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっている。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどれ位変動したのかを予測修正率と言う。
 5月の予測修正率は0.0%と、4月調査時点の生産計画と同じ水準の計画としており、生産計画の修正は生じていない。これまで生産計画は、おおむね下方修正される傾向にあったことを考慮すると、5月の予測修正率からはやや強気の側面が見られる結果となっている。

 各社別に、生産計画が上方修正された数と下方修正された数を比較して、その比率の差分を計算している。この指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用している。
 5月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス5.8となった。4月調査結果でのマイナス6.9から上昇しており、2か月ぶりの上昇となる。
 この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られている。5月調査結果では、4月調査結果より改善しているものの、引き続きマイナス5を下回る水準となった。月々の上下動をならしたアニマルスピリッツ指標のトレンドで見てもマイナス5を下回っており、緩やかな低下傾向で推移している。実際の景気判断は鉱工業の生産以外にも様々な要素を考慮し行われるものであるが、生産マインドは月々の変動があるなかで、どちらかというと、やや弱気な状況が続いている状況だ。この傾向が今後も続くかについては注意して見ていきたい。

 5月調査では、強気(計画上方修正)の割合と弱気(計画下方修正)の割合はともに増加したが、強気の割合の増加が大きく、その結果アニマルスピリッツ指標は上昇した。
 しかし、生産計画を上方修正した強気の割合の回復が鈍く、他方、生産計画を下方修正した弱気の割合は、5月も3割を超えた状態が続いている。

 このように、5月調査に見られる生産マインドは、予測修正率等ではやや強気な側面が見られ、アニマルスピリッツ指標でも5月調査結果については、前月から上昇するなどの動きが見られる。しかし、アニマルスピリッツ指標は依然低い水準のトレンドで推移しており、また6月までみると、企業の生産計画は低い数値になっているため、総じてみればやや弱気な状況が続いていると考えられる。
 なお、今回の生産計画は5月上旬時点での調査であるため、企業の計画値には、5月以降の情勢が十分に織り込まれたものとは言い難いところもあり、今後この計画がどのように修正されるかが注目される。今後の企業マインドを引き続き注意してみていきたい。
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