地域未来

極小チップ部品の表面実装で世界をリード

部品間0.05ミリメートル実現で一躍脚光のアリーナ

福島県相馬市にある生産ライン


 極小チップ部品の表面実装技術(SMT)において世界最先端を走るアリーナ。アルプス電気(現アルプスアルパイン)の協力会社として創業し、プリント基板製造やチューナー組み立てなどを手がけてきた。1983年に電子部品実装機(チップマウンター)によるプリント基板への実装をスタート。現在は近距離無線通信規格「ブルートゥース」や無線LAN関連部品を製造する。

外部メーカーの協力や設計見直しで実現

 アリーナを業界内で一躍有名にしたのが、2016年に確立した「0201」と呼ばれる極小チップの超高密度狭隣接での実装技術だ。0201チップは0.25ミリメートル×0.125ミリメートルの現状で世界最小のチップ。同チップ同士の隙間を最も狭くて0.05ミリメートルまで狭めて実装できる。
 2代目の高山慎也社長は「電子部品が小さくなっただけで、さまざまな実装の環境を変えないといけない。外部メーカーの協力を受けて一つ一つ課題をクリアしていった」と振り返る。チップの小型化が進むことで従来のハンダ実装ができなかったり、寸法バラつきの許容範囲が狭くなったりする。そこでメタルマスクやノズルの形状や材質、実装ラインの設計を見直すなどで同業他社をリードする実装技術を確立した。
 「0201」実装技術が呼び水となり、顧客から「0603」や「0402」など小型チップの実装は可能かといった問い合わせも増えて実績につながっている。同社では顧客の要望に対し「それはできません」と回答せず誠実に耳を傾ける姿勢を見せる。高山社長は「課題を克服した時のエンジニアの喜びは私の喜び」と社員の活躍に目を細める。

高山慎也社長

5Gもにらみ

 現在、福島県相馬市にある本社工場は8ライン。月間で2億3000万チップの生産能力を持つ。生産するブルートゥースユニットなど無線通信関係の半数以上が車載用だ。自動車の移動体間通信に関する需要の高まりを受け、同社も主要取引先のアルプスアルパインと連携し、第5世代通信(5G)技術や車載センサーなどに対応した実装技術の確立を目指す。
 研究開発型企業として、さらなる技術革新にも取り組む。2011年度には経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に「部品内蔵基板内の狭間隔部品実装技術及びWLP-LSIチップ実装技術の確立」が選定された。電子回路基板の小型・高集積化を実現するために産業技術総合研究所と組み、部品内蔵基板内の部品0.05ミリメートル狭隣接実装技術の要素工程開発などに取り組んだ。
 高山社長は「自社ネットワークを生かして実現できるはずだ」と応募を決断。アリーナは全国からサポイン事業に集まった15社程度の企業をつなぎ、試作などを指示する役割を果たした。2014年には医療機器製造業資格も取得した。「新しいことにチャレンジすることで活性化につながる」(高山社長)との信念があった。その後、量産や試作の新規取引につながっている。

東日本大震災を乗り越えて

 東日本大震災では天井の崩落、設備が最大1メートルずれるなどの被害を受けた。津波で命を落とした社員もおり大きな喪失感を抱えた。それでも社員のことを優先し、工場再開を決断。設備メーカーなどの応援を受け、約10日間で復旧した。ただ、震災後は外部環境の変化もあり、ピーク時に年間12億円あった売上高が減少。社員数も震災前と比べ約50人減の140人となった。
 地域に貢献する企業を目指す同社は「できるだけストレスのない労働環境にしたい」(同)として社員が働きやすい職場づくりに力を入れている。育児休業、介護休業、無期契約社員化、定年再雇用などの制度を整備し、社員が安心して長く働ける労働環境を整えている。こうした取り組みもあって社員の半数以上が女性だ。新卒で入社して結婚し、育休後に職場復帰する女性社員も多数いる。
 社員の資格取得も奨励している。ハンダ付けなどの社内検定を多数実施。一人の社員が複数の資格を持つ「多能工制」を敷くことによって限られた人数で効率的な業務を推進している。経費削減やアルプスアルパイン角田工場(宮城県角田市)で始まった構内請け負いなどの新規事業の効果もあって経営面では黒字を継続している。
 今、アリーナは「魅力ある会社とは何か」「ノンストップライン」という二つのテーマに取り組んでいる。魅力ある会社の第一歩としてトイレを全面改修した。今後は管理職中心のチームが社員のストレス軽減策を検討している。ノンストップラインは設備のスイッチを一度入れたら長時間稼働し、停止しないラインを示す。すでに不良部分を避けて生産する機械の仕組みを構築した。これからも改良を続け、無停止の24時間稼働を目指す。
 高山社長は「仕事のやり方や固定概念を変えることで事業拡大に転じた時に『復興』が実現する」と考える。同時に地元自治体との連携も重視する。未曽有の大震災から8年。復興をけん引する地元企業としての挑戦が今後も続く。

【企業情報】
▽所在地=福島県相馬市石上字宝田69▽社長=高山慎也氏▽設立=1970年3月▽売上高=6億5000万円(2019年2月期)

極小チップ部品の表面実装で世界をリード

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