地域未来

日常生活の「動き」支える開発精神

東京のものづくりをリードするTOK

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スムーズな着脱で動力制御機構をデモンストレーションする「IKEBANA」

 東京・板橋区にあるTOK本社のショールームでは一風変わった「生け花」が訪れる人を出迎える。花に見立てた金属の棒が滑らかに動き、花器に見立てた台に美しく生ける動作を模している。機構部品の新シリーズ「SRシリーズ」を、こんな演出でアピールする。

あらゆる“動き”を提供

 1964年に業界初のプラスチックベアリングを開発したことで知られるTOK。常識を覆してきた開発精神がいまなお、受け継がれている。
 「これまでにない”動き”を。」をスローガンとする同社。東京都板橋区で1938年に創立し、昨年、80年を迎えた。設立当初は金属ベアリングの製造が中心だったが、家具メーカーからの需要や樹脂素材との出会いといった時代背景もあり、64年に当時は珍しかったプラスチックベアリング分野へ進出した。
 現在、同社の開発製品はベアリング、クラッチ、ダンパーなど多岐にわたり、商品アイテムは3000種に上る。中でもベアリングは現在、500品種以上は流通しており、低コストで高性能なポリアセタール樹脂はじめ、数多くの材質を取り扱う。家具やオフィスデスクの引き出しを円滑に引き出す役割を果たす「DR-22」は定番製品だ。
 従来品も生産しつつ、新製品開発も積極的に展開していることが同社の持ち味の一つ。一風変わった金属の生け花を表現した「SRシリーズ」の頭文字は、顧客ニーズへの対応「Special Requirement」の思いが込められている。生け花に使用された「SRX」は片手で差し込むだけの操作で固定できるユニット機構部品だ。ユニットの凸側となる先端を凹側の穴に差し、ボールペンのノックのようにプッシュするだけで確実に固定できるので、なじみやすい使い心地だ。

時代とともに、東京のモノづくり

 同社の国内製造体制は東京本社に設計部門として約20人を抱え、山梨工場をマザー工場として展開している。山梨工場では製造工程の一部ロボット化も検討しているという。
 メーカー勤務を経て、2015年に30代の若さで社長に就任した吉川桂介社長。自社の強みを「家具や家電などさまざまな用途の製品開発を通じ幅広い産業との接点を持つなかで培われた『設計力や対応力、そして総合力』」と語る。

吉川桂介社長

 機構部品を幅広く展開する一方で、吉川社長は、社内自体がベアリングとクラッチ、ダンパーを事業の3本柱とする「半ば思い込みに近い雰囲気」に危機感を感じていたことも明かす。社長就任から2年後には社名をかつての「トックベアリング」からすでにブランド名として浸透していた「TOK」に変更。ちなみに「TOK」には創業者である「吉川時蔵」の名と、「東京」のモノづくり企業であるとの思いが込められている。

働き方改革の先頭に

 「進取の精神」はものづくりだけではない。開発や販売を支える社員がそれぞれの能力を最大限発揮できるよう職場風土改革も積極的に推進する。2018年に新本社が完成したのを機に、食堂やフリーアドレス制を導入した。1年前には、東京都が旗を振る「時差Biz」に参加。通常の始業時間の8時半のほか、7時半、9時半、10時半のいずれかから始業時間を選べる時差出勤制度に取り組んだ。その結果、ワークスタイル部門で「時差Biz推進賞」を受賞。受賞者の多くが大手企業であるなか、中小企業がこれからの働き方を模索する姿を印象づけた。
 新たな収益源として注目するのは住宅設備や医療機器分野である。ドアの開閉の緩衝を和らげるダンパーや磁気共鳴断層撮影装置(MRI)に非磁性のベアリングを提供する案など、新製品開発の“動き”はますます加速している。2020年の連結売上高目標も50億円を掲げ、地域に根ざし東京を代表する企業としてさらなる成長に挑む。
【企業情報】
▽所在地=東京都板橋区小豆沢1の17の12▽社長=吉川桂介氏▽設立=1938年▽連結売上高=46億円(2018年9月期)

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