METI Journal

経済産業省

航空産業 飛躍の時 vol.6

企業の枠超え成長市場に挑む

参入果たした部品・素材メーカー編(後編)

共同受注や一貫生産で航空機産業への参入を目指す動きが広がる
共同受注や一貫生産で航空機産業への参入を目指す動きが広がる

国際競争力強化へ大型鍛造品を国産化

 神戸製鋼所や日立金属などが出資する航空機部材メーカー、日本エアロフォージ(Jフォージ、岡山県倉敷市)-。大型鍛造品の国産化を目指して2011年に設立されたこの合弁会社が、新たなステージを迎えようとしている。
 同社は現在、エンジンや機体、着陸装置部品に使用されるチタン合金やニッケル合金などの大型鍛造部材を量産している。
 これまでは航空機の大型部材用の鍛造品は国内で製造できる設備がなく、海外企業に全面的に依存せざるを得ない状況だった。このため神戸製鋼所、日立金属など6社の共同出資によりJフォージが設立され、世界最大級の5万トンプレス機を導入した。これにより、航空機のエンジン部品やランディングギアの製造を受注できるようになった。
 生産現場でこうした設備を操作するのは岡山県で現地採用した社員たちだ。5万トンという国内で導入事例がないプレス機の操作を「試作品を作りながら学んでいった」と語るのはJフォージの石倉洋二社長。工場の稼働から5年。「ようやく大型鍛造品メーカーとして認められるところまできた」(石倉社長)。

Jフォージの世界最大級プレス機
Jフォージの世界最大級プレス機

 今後の課題は生産性の向上だ。認定承認を得た生産工程は基本的に変えることはできない。そこで段取り時間の短縮や治工具の改善などを通じて「地道な取り組みを行っていく」(同)。生産品目の増加にも対応し、新たな生産管理システムの開発・導入を進めている。AI(人工知能)も活用し自動化を推進し、品質と生産性向上の双方を実現する構えだ。

 

中小10社が一貫生産 松阪クラスター

 航空機には1機あたり300万点もの部品が用いられ、中小製造業がサプライヤーとして支えている。こうした企業が共同組織「クラスター」を設立し、共同受注や一貫生産で効率化を図る取り組みが全国各地で進む。代表例が、三重県松阪市の航空機部品生産協同組合(通称、松阪クラスター)だ。
 「のこぎり発注」-。航空機産業の構造を表す言葉だ。航空機の機体やエンジン製造を担う発注元の重工業大手が、協力会社のサプライヤーに加工を発注して納品されると、次の工程を別の協力会社に発注するというやりとりの繰り返しを表現している。サプライチェーン全体でのコスト競争力強化が求められる中、このような発注体制では、フロータイムの長期化、管理・物流コストの増大が課題となっていた。松阪クラスターはその解消を目指し15年4月に設立した。

「のこぎり発注」からの脱却に向けて

 松阪クラスターは、三菱重工の松阪工場の建屋の一部を購入し、16年3月に共同工場の整備を始めた。17年3月には竣工式を開き、同年秋から段階的に生産を始めた。

三重県松阪市の中核工業団地にある「松阪クラスター工場」
三重県松阪市の中核工業団地にある「松阪クラスター工場」

 クラスターに参加するのは、長年航空機産業に従事してきた愛知県や岐阜県などの中小製造業10社である。岐阜県各務原市の加藤製作所の加藤隆司社長が代表理事を務めており、共同工場でボーイングの機体部品を一貫して生産する。三菱重工の子会社三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の部品を生産する可能性もある。
 とりわけ、熱処理やショットピーニング、表面処理・塗装といった特殊工程を手がける企業が参加する意義は大きい。特殊工程を担える企業がなく、外注することになれば、共同工場による一貫生産のメリットを発揮できないからだ。A社からB社、次にC社と各社の加工工程が連続し、一貫生産することで、のこぎり発注から脱却できる。
 

ITによる生産管理

 一方、各社が連携して生産するためには、共通の生産管理システム整備は不可欠だ。参加企業ごとに別々のシステムでは、一貫生産の効果が発揮できないため、松阪クラスターでは参画企業内の活用に最適化された生産管理システムを開発している。同組合の政木達也事務局長は「なくてはならない必需品」と重要性を説く。システムはほぼ完成しているという。
 また、生産管理だけでなく参加企業間の受発注にもEDI(電子データ交換)を採用した。IT化が進んでいる自動車業界で使われるEDIをベースに、航空機部品に必要な要素をカスタマイズし、生産性向上に努めている。
 今後は参加企業が自社で手がける部品加工を共同工場に展開し、稼働率を高めていく計画だ。航空機業界で実績のある各社だが、クラスターとしての本格的な活動は、これからが正念場だ。

広がる日本のクラスター

 このようなクラスターは全国で40あまりが立ち上がっている。所属企業の多くが他の産業から航空機産業へ新規参入を目指し、加工工程の受注を果たした「KSC(関西サプライチェーン)」や、無人搬送システム等を導入し省人化を実現した共同工場内で一貫生産を目指す「NIIGATA SKY PROJECT」など、既に受注獲得に向けて動き出しているクラスターをはじめ、18年7月には北海道で初めて立ち上がった「北海道航空ビジネス検討会」など、航空機産業分野へこれからチャレンジを図るクラスターも生まれつつある。

     
     

 国もこうした動きを後押ししようと、全国規模で連携するネットワークとして「全国航空機クラスター・ネットワーク」NAMAC(ナマック)を発足させた。その代表的存在である「松阪クラスター」が軌道に乗り、成果を上げることは、こうした企業連携の取り組みが活発化する上でも期待が寄せられている。

あわせて読みたい

データビジネスを支える衛星・ロケット開発最前線

政策特集

データビジネスを支える衛星・ロケット開発最前線

衛星データ ビジネスに変革もたらす

政策特集

衛星データ ビジネスに変革もたらす

ブランド米や水産養殖 衛星データで「育てる」時代

政策特集

ブランド米や水産養殖 衛星データで「育てる」時代

「衛星データの利用拡大で日本は変わる」

政策特集

「衛星データの利用拡大で日本は変わる」

広がる民間参入 国も後押し

政策特集

広がる民間参入 国も後押し

空飛ぶタクシー構想 すべてを話そう

政策特集

空飛ぶタクシー構想 すべてを話そう