METI Journal

経済産業省

コネクテッド インダストリーズ Vol.3

ロボット王国、社会課題の解決策を世界に発信

2020年が大きな舞台に

羽田空港の「Haneda Robotics Lab」
羽田空港の「Haneda Robotics Lab」

 ロボット革命で課題解決型社会の実現へ-。政府は中長期戦略に基づき、あらゆる場面でロボットが活躍する社会の創出を目指している。従来の機械より“人の動作に近い”ロボットを用い、解決が困難な社会課題の克服につなげたい考え。また、ロボット大国とされる日本の技術を基に、世界をリードする新産業を生み出すことも狙いだ。経済産業省の施策などにより、ロボットの活用範囲は着実に広がっている。

羽田空港は壮大な実験場

 「清掃中です、前を空けてもらえませんか?」「作業が完了しました!」。自律移動型のロボットが、音声で注意喚起しながらスイスイと床を掃除していく-。羽田空港で2016年度に実施された公開実験の光景だ。

 ロボットは時速2.4キロメートルで動き回りながら、下部に装着したパッドで床面を洗浄。最大で毎時1200平方メートル分の作業が可能だという。稼働時は通行中の一般客が立ち止まり撮影するなど、大いに注目を浴びた。

 実験で使われたのはアマノのロボット床面洗浄機「SE-500iXⅡ」。空港の管理運営を担う日本空港ビルデングが、ロボット利活用プロジェクト「Haneda Robotics Lab(ハネダ・ロボティクス・ラボ)」の一環で実験導入した。

アマノのロボット床面洗浄機
アマノのロボット床面洗浄機

 「空港も労働力の確保の問題に直面する」。実験に携わる同社の志水潤一事業企画部次長は、プロジェクトを推進する理由の一つに将来的な人手不足を挙げる。

 現在、空港内で働く人の数は数万人。日本全体で人材確保が難しくなる中、いかにサービス品質を維持するかが喫緊の課題だ。ましてや羽田空港は、政府の方針により発着枠が拡大される見通し。対応策として同社が着目したのが、ロボットだ。

 「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、海外から来る人も増える」と、志水次長はもう一つの理由を明かす。訪日客を愉しませ記憶に残すには、ロボットは絶好のツールだ。産業用ロボットのトップメーカーがひしめくこともあり、“ロボット大国”として日本の知名度は高い。

 Haneda Robotics Labでは実験に用いるロボットを公募し、SE-500iXⅡや日立「エミュー3」、ソフトバンクロボティクスの「ペッパー」など計17種のロボットを選定。2016年12月から翌年2月にかけ、清掃、移動支援、案内の3テーマで実験を行った。

 結果を踏まえて問題点を洗い出し、各ロボットメーカーへ改良を要請。今夏から第2次実験を実施し、最終的には2019年度末までに本格導入する計画だ。

日立製作所の「エミュー」が羽田空港で訪日客をお出迎え
日立製作所の「エミュー」が羽田空港で訪日客をお出迎え

まだまだある開拓領域

 日本空港ビルデングが第1次実験の際に利用したのが、経産省の「ロボット導入実証事業」。同事業ではロボット活用の効果を実機で検証する取り組みを、費用面などで支援している。2015年に始動し、これまでに250件近くを採択。空港のようなサービス分野のほか、食品、化粧品、その他中小企業なども含むロボットの未活用領域を開拓することが目的だ。

 また、採択先の取り組みを先進事例として発信し、横展開につなげる構え。このため、経産省は動画などで事例を紹介するウェブサイト「ロボット活用ナビ」を、日本ロボット工業会と共同で制作。ロボットの導入検討時に使える支援ツールとして、活用を促している。

 2017年3月、ロボット導入実証事業の管理事業者でもある日本ロボット工業会が、2016年度の成果報告会を開いた。日本空港ビルデングの実験をはじめ、6件の事例を発表。工場への導入案件では、資生堂の取り組みが注目を集めた。

化粧品工場がモデルケースに

 「化粧品は消費者の嗜好に左右されやすい業界。ここ数年で品種が増えており、生産現場では小ロット化が加速している」と同社生産技術開発センターグループマネジャーの小林毅久氏は、ロボット導入の背景を説明。専用的な自動機より品種変更に対応しやすいため、ロボットに着目したという。続いて小林氏は、粉末化粧品を製造する掛川工場(静岡県掛川市)に導入したロボットシステムを紹介した。

 用いるのはカワダロボティクスが開発した人型双腕ロボット「ネクステージ」。低出力モーターを採用するなど、人との協働を想定した設計が特徴だ。資生堂が構築したシステムも、人とロボットが同じ空間で働く仕組み。人は仕掛品の目視検査などを担当する。「傷がないか検査する仕事では、人の感性が必要」と小林氏は強調。一つのセルを作業者1人とロボット2台で構成しているという。

資生堂の掛川工場で人と協働
資生堂の掛川工場で人と協働

 ロボットの導入により、労働生産性は従来の1.12倍に改善。作業の品質も高まった。掛川工場では今後、生産性のさらなる向上を図るとともに、口紅や化粧水など他製品への展開も検討する方針。ロボット化が進んでいない三品業界(食品、医薬品、化粧品)のモデル工場として、一層の進化が期待される。

 ロボットは、機械ではあるが人のように柔軟に動作できる点が特徴だ。人と機械をつなぐ存在として、さまざまな可能性を秘める。政府が掲げる新たな産業振興戦略「コネクテッドインダストリーズ」も、“つながる”がキーワード。人と人、機械と機械、そして人と機械などが円滑に連携する上で、ロボットが活躍する場はますます広がりそうだ。

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