METI Journal

経済産業省

地域未来牽引企業 vol.5

建設現場を快適に

仮設トイレ製造・販売・レンタルの日野興業

   従来の仮設トイレの2倍のスペースを実現                    
   従来の仮設トイレの2倍のスペースを実現                    

 住宅などの建設現場や土木工事現場でよく見かけるポリエチレン製の仮設トイレ。一般的には、狭くて不衛生なイメージがあるかもしれない。しかし最近では、仮設トイレの中にも「快適トイレ」というカテゴリーの製品が登場しており、従来よりも清潔で使いやすいトイレが普及しつつある。この快適トイレを業界に先駆けて提案したのが、仮設トイレ大手の日野興業である。建設現場で人手不足が深刻化する中、作業環境の改善は大きな課題。女性の活躍促進も求められている。同社は、現場のニーズを反映した製品開発を通じ、働きやすい職場環境作りに貢献している。

現場のニーズを反映した製品開発が強み

 日野興業は仮設トイレの製造と販売、レンタルで業界大手の企業だ。建設工事現場で最も利用されるポリエチレン製仮設トイレのほか、洋式便器や洗面台などをオールインワンで装備した高機能な屋外トイレ、複数の個室を備えた集合型トイレハウス、災害用の簡易トイレなどさまざまなタイプをそろえる。販売・レンタルともにトイレ製品が売上高の半分以上を占めるが、トイレ以外にも、仮設のシャワー室やバスユニット、ガードマンボックス、トイレ付帯設備などを扱っている。

 設立は1952年。仮設トイレの製造から始め、1970年前後にレンタル事業に着手して業容を拡大してきた。レンタルを手がけることで現場のニーズを収集できるようになり、「現場を知る社員の提案を重視してボトムアップ型の製品開発ができることが会社の大きな強み」と積田喜信社長は説明する。

建設現場で働く女性のための仮設トイレを製品化

 同社が力を入れている事業の一つが、女性用の仮設トイレ「フラワートイレ」シリーズの展開だ。男性社会の建設現場に従来はほとんど存在しなかった「女性専用の仮設トイレ」を提案することで、建設業界での女性の活躍を後押ししている。

 同シリーズの提供を始めたのは2014年。まず、女性専用のポリエチレン製仮設トイレ「フラワートイレLXシリーズ」を製品化した。一般的な仮設トイレの色が青やグレーなのに対し、同製品はピンクを採用。サイズは既存のポリエチレン製仮設トイレと変わらないが、装備は暖房便座付の洋式便器、擬音装置、棚付の紙巻器など充実している。また、外観をピンクにして女性用であることを強調することで、男性から使われにくくなり、女性が安心して使えるようにした。

 その後、「着替えや物を置くためのスペースがほしい」という現場の女性の声に応え、内部のスペースを従来の2倍にして更衣室にも使えるトイレ「フラワートイレWLXシリーズ」を製品化した。一般的なポリエチレン製仮設トイレを2棟結合したような形をしており、内部に手洗器や鏡、複数の棚、着替台などを装備、着替えたり身だしなみを整えたりするのに十分なスペースを確保した。

快適トイレのトレンドを創出

 積田社長によると、女性専用仮設トイレの必要性自体は従来から業界で認識されていたという。しかし、売れる保証がなかったため、製品化に踏み切るメーカーがなかなか現れない状況が続いていた。そんな中、建設業界で女性の活躍を推進しようという機運が高まってきたことを受け、同社は製品化を検討した。

 「女性が活躍する環境を整備するという視点でものを見た時に、今までの仮設トイレではまったく不十分だと認識するようになった。リスクもあったが、女性活躍推進という業界の機運が一過性ではなく、今後は当たり前のことになると信じて製品化に踏み切った」と積田社長は話す。

 その結果、フラワートイレは想定以上にヒットした。現在では、女性でも男性でもあらゆる作業者が使いやすい仮設トイレを普及しようという動きが業界のトレンドになり、国土交通省では洋式便座、水洗機能、二重ロックなど一定の仕様を満たした仮設トイレを「快適トイレ」と定め、2016年から普及を推進している。こうしたトレンドに先鞭(せんべん)をつけた同社でも、女性専用仮設トイレのノウハウを応用して男女ともに使用可能な快適トイレの製品展開を加速している。

災害時に大きく貢献

 仮設トイレは建設現場のほかに、災害時の避難所などに必要不可欠な製品だ。そのため同社では、大規模災害の発生時には自治体や国に全面協力し、仮設トイレを迅速に供給する体制を整えている。

積田喜信社長
積田喜信社長

 2016年の熊本地震では、経済産業省からの要請により簡易トイレ約1200個と仮設トイレ約500棟を出荷した。また、過去の災害を教訓に、軽量で運搬しやすく壊れにくい樹脂製の便器を独自に開発するなど同社の仮設トイレが平時と災害時、両方のシーンで使用できるように製品開発にも力を注いでいる。

 同社は今後も、日本の安全・安心を支える製品の提供を通じ、社会貢献を続けていく考えだ。

【企業情報】
▽所在地=千葉県市川市原木3024▽社長=積田喜信氏▽設立=1952年4月▽売上高=約103億円(2017年9月期)

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