政策特集地域未来牽引企業 vol.11

世界のモビリティーを支える

航空宇宙関連の事業などを手がける東明工業

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 航空機産業を支える企業から、自動車、鉄道などモビリティー全般を支える企業に進化しようとしている企業がある。愛知県知多市に本社を置く東明工業だ。

創業15年で主翼組み立てに進出

 1965年、三菱重工業OBが前身の睦工業を創業し、航空機部品を木箱で梱包(こんぽう)する仕事を始めた。倒産の憂き目に遭うも、1973年に創業者の義理の息子の二ノ宮康弘前社長が後を継ぎ、東明工業に社名変更して再スタートを切った。梱包や治工具の仕事をしつつも、二ノ宮前社長は航空機本体の仕事をする希望を持ち続けた。1980年に三菱重工のビジネスジェット「MU-300」の主翼組み立ての仕事を獲得し、現在も主力とする組み立て事業に乗り出す。

 組み立て事業は人材の確保が不可欠のため、1982年に2億円かけて独身寮を建設。個室、冷暖房完備と充実した環境を用意したことで、人材を確保できた。その後も三菱重工から航空機やロケットの組み立ての仕事を受注し、順調に事業を拡大していく。三菱航空機が開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の組み立ての一部も担っている。

M&Aで業容を拡大

 一方で、組み立て以外の事業も立ち上げている。2009年に二ノ宮前社長が他界し、長男の二ノ宮啓社長が後を継ぐ。ほどなく取り組んだ大仕事が、合併・買収(M&A)だ。二ノ宮社長が着目したのが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)だ。軽い上に強度の高いCFRPは、航空機に限らず、さまざまな分野で採用が拡大している。CFRPを加工する2社を買収したことで、業容を広げることに成功する。

 2社とは、2010年に買収した長野県松本市のピーエヌシー(PNC)と、2011年に買収した大阪府茨木市の茨木工業だ。両社は複合材を積層して高温高圧で硬化させる装置「オートクレーブ」を持ち、航空機以外の業界からも仕事を獲得してきた。例えば茨木工業は、自動車用シートで知られる独レカロの日本法人から、モータースポーツ用のシートを受注した。カーボンを一体成型する技術が評価されたためだ。これまで下請けの仕事はあったが、直接受注は初だ。

 東明工業はこの2社を今年4月1日付で合併し、新会社「TIPcomposite」を発足させた。狙いは両社が別々にこなしている仕事を融通させることだ。PNCは2017年に本社付近に新工場を稼働させ、オートクレーブが2基増えて3基になった。茨木工業が対応しきれない仕事をPNCが受けることが可能になる。

モビリティを通じ社会に貢献

 東明工業はCFRP加工などで、自動車、鉄道など航空機以外の分野を拡大してきた。その姿勢は「航空宇宙産業の一翼を担う」としてきたキャッチコピーを、2017年夏に「モビリティを通じて社会に貢献する」に変更したことにも現れている。航空機に限らず、乗り物全般に欠かせない技術を提供する企業になるという意思表示だ。

 それを押し進める取り組みの一つが、2017年の愛知県みよし市の加藤鉄工の買収だ。同社はトヨタ紡織の下請けで、自動車用シートの生産ラインの専用機を手がける。加藤鉄工を通じて自動車分野の拡大を図るほか、同社が持つ工作機械などの生産設備を、東明工業の製品の部品加工に活用する。同社の買収によって、東明工業もトヨタ紡織との取引口座を持てた効果も大きい。

 もうひとつ、航空機以外の拡大で実績を挙げているのが、モーターボートの揺れを軽減する機器「アンチローリングジャイロ(ARG)」だ。三菱重工から2016年に譲り受けた。大手ボートメーカーの純正オプションに採用されたことで、譲渡以前より販売台数を2倍に伸ばせた。二ノ宮社長は「エンド製品になるものが出てきた」と喜ぶ。

三菱重工業から譲り受けたアンチローリングジャイロ(ARG)の売り上げを順調に伸ばしている

航空機分野は3分の1

 モビリティー全般への拡大戦略により、売上高に占める航空機分野の比率は下がっている。2017年のグループ全体の売上高約150億円のうち、航空機分野の割合は3分の1ほどだ。ただ、二ノ宮社長は「看板を捨てたわけではない」と航空機分野にこだわる。「航空機で培った信頼が他の仕事にもつながっている」とも考える。

 2017年にカナダ法人を設立し、海外にも事業を拡大しようと動き始めた。航空機を核に、世界のモビリティーを支える企業になろうとしている。

【企業情報】
▽所在地=愛知県知多市新刀池2-11▽社長=二ノ宮啓氏▽創業=1965年▽売上高=90億円(2017年8月期)

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