METI Journal

経産省

今、福島は vol.9

浜通りにおける新産業の芽生え

福島イノベーション・コースト構想の推進②

福島エコクリートでは地元雇用に力を入れる
福島エコクリートでは地元雇用に力を入れる

 浜通り地域等の新たな産業基盤の構築を目指す福島イノベーション・コースト構想について、前回は廃炉、ロボット、エネルギー分野における取組を紹介した。今回は農業、教育、環境・リサイクル分野における取組を紹介する。

日本の農業のフロンティアを目指す

 浜通り地域等における農業は、農家の担い手不足や高齢化、更には風評被害により買い手が見つからないなど、大きな課題を抱えており、これらを解決すべく、先導モデルとなる取組を進めることが重要である。省力化や効率化、販路の確保等を目指し、土地利用型の大規模生産プロジェクトや、先端技術を活用した環境制御型施設園芸プロジェクト等が浜通り各地で進められている。

 その主な取組として、農業法人「株式会社舞台ファーム」の取組がある。舞台ファームは、津波や原子力災害に基づく避難指示により営農が中断した南相馬市小高区において、地元営農組織の「株式会社紅梅夢ファーム」と連携し、2017年から米の作付けの再開支援を実施している。収穫された米については、舞台ファームと共同で精米事業に取り組んでいるアイリスオーヤマグループにて全量を買い取り、南相馬産米のパックライスとして販売するなど、販路を含めてバックアップをしている。舞台ファームは今月には浪江町と農業再生、担い手育成についての連携協定を締結するなど、浜通りの他市町村でも営農再開支援に取り組んでいる。

 また、いわき市にあるワンダーファームグループの取組も注目されている。耐風性・耐雪性に優れた「低コスト耐候性ハウス」や各種環境因子を高度に制御できる「環境制御装置」等を導入し、4.1haの施設で年間1500tのトマトを生産している。収穫したトマトは、トマトのテーマパーク「ワンダーファーム」において、レストラン食材やジュース・ドレッシング等の加工品として活用されている。このように、トマトの生産・加工・販売・観光を一体型施設において、農業と食の体験を通じた新たな価値の提供に取り組んでいる。

ワンダーファームでは、農業と食の体験を通じた新たな価値の提供に取り組んでいる。
ワンダーファームでは、農業と食の体験を通じた新たな価値の提供に取り組んでいる。

イノベーション・コースト構想を担う人材を育成

 福島イノベーション・コースト構想の実現に向けては、構想を担う人材の長期的な教育・育成の基盤を構築することが不可欠だ。このため、浜通り地域等における大学等による教育研究活動の活性化や、高等学校における産業界と連携した教育プログラムの充実などに取り組んでいる。

 大学については、県内のみならず、様々な県外大学も浜通り地域等に入り込んで教育研究活動を実施しており、その1つとして慶應義塾大学の取組がある。田村市でドローンを利活用した研究・教育活動の推進や地域振興に取組んでいる。2016年12月に田村市と連携協定を締結し、田村市内の県立船引高校で、ドローン特別講座を行っている。また、ドローンに搭載したセンサーを活用した農業の効率化・高度化にも取り組んでおり、田村市内のグリーンパーク都路でその実証試験が進められている。

市防災訓練で空撮をする船引高校生
市防災訓練で空撮をする船引高校生

 高等学校での取組の一例としては、2017年4月に開校した小高産業技術高校を紹介したい。文部科学省から「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」の指定(2017-2019年)も受け、構想を担う専門人材の育成に向け、大学や企業との連携によるロボット工学や再生可能エネルギー技術、ビジネスなどに関する教育を実施している。このような、構想の実現に寄与する人材育成を目指した特色ある教育を他の高校にも広げるべく、福島県では、浜通り地域等の普通科高校、工業高校、農業高校を対象に新たな教育プログラムを開発に取り組んでいる。

浜通りに先端的なリサイクル産業を

 福島県は2015年以降、「ふくしま環境・リサイクル関連産業研究会」を設立し、①小型家電リサイクル、②太陽光パネルリサイクル、 ③浜通りにおける廃棄物処理システム構築、 ④石炭灰リサイクルの4つのテーマごとにワーキンググループ(WG)を組織し、事業化に向けた検討を進めている。そのうち、石炭灰リサイクル事業化WGから誕生した「株式会社福島エコクリート」の取組を紹介したい。

 「株式会社福島エコクリート」は、南相馬市小高区において、近隣の火力発電所から発生するフライアッシュ(石炭灰)を主原料として、路盤材などに使われるエコクリート砕石の製造・販売を行う事業を新たに立ち上げた。
 
 原料であるフライアッシュは県内に立地する火力発電所から発生したものを使用しており、産業副産物の「地産池消」を実現した、環境にやさしい土木資材だ。製品名は「ORクリート」で、これは小高復興(リサイクル)クリート “Odaka Rivive (Recycle)クリート”の頭文字からつけたネーミングである。地元の小高産業技術高等学校の生徒から製品名を募集して採用されたものだ。

 また、同社では、今年3月の開業にあわせて、20名の方を地元から雇用している。その中には、同社への就職に合わせてふるさとへ帰還を果たした方も6名含まれており、地域の復興にも貢献している。

 福島イノベーション・コースト構想は、浜通り地域の各地において、具体的な取組として着実に動き始めている。浜通り地域の産業復興を実現するため、産業集積や人材育成、交流人口の拡大など、構想の具体化に向けて、引き続き、官民挙げて全力で取り組んでいく。

あわせて読みたい

先駆者・ドイツはどこまで進んでいるのか

新着記事

政策特集

先駆者・ドイツはどこまで進んでいるのか

【PFN・西川社長インタビュー】深層学習が機械や異分野の産業をつなぐ

政策特集

【PFN・西川社長インタビュー】深層学習が機械や...

自動車革命とキーデバイス半導体

政策特集

自動車革命とキーデバイス半導体

日本の強み、エッジコンピューティングとは?

政策特集

日本の強み、エッジコンピューティングとは?

けん引する若きベンチャーたち

政策特集

けん引する若きベンチャーたち

【パナソニック・馬場渉氏インタビュー】組織がつながれば日本企業もプラットフォーマーに

政策特集

【パナソニック・馬場渉氏インタビュー】組織が...