METI Journal

経済産業省

地域未来牽引企業 vol.8

ロボットとAIを組み合わせ、新技術提案

産業用破砕機・選別機メーカーの近畿工業

時代のニーズに合わせた技術開発を進める(近畿メカノケミカル研究所)
時代のニーズに合わせた技術開発を進める(近畿メカノケミカル研究所)

 近畿工業は、産業用破砕機・選別機の開発志向型メーカー。変わりゆく時代のニーズに合わせて技術転用を図り、成長を遂げてきた。特に自治体向けの大型二軸剪断式破砕機は、累計販売台数2000台以上と国内シェアは40%を超え、トップを誇る。建築土木工事向けの振動ふるい機も1957年の発売以来改良を続け、累計2万台超えの販売実績を持つ。和田直哉社長は「時代に合わせてニーズを掘り起こし、技術転用や技術開発を図ってきた」と、変化をいとわない成長戦略を掲げる。

建設需要の低迷でゴミ処理分野へ

 1948年の創業当初は、機械加工下請けやメッキ加工を手掛け、その後鉱山機械メーカーへと転身。時代のニーズに合わせて鉄鋼・セメント製造の原料処理用や、採石業界などに技術を応用した機械を販売し、高度経済成長期と共に成長を遂げた。1970年代頃からオイルショックなどの影響で建設需要がなくなると、業態を広げるべく都市ゴミの前処理機械需要に着目。地方自治体などが手がけるゴミ処理施設の前処理機械を販売し、長年かけて国内トップシェアとなった。

 地方自治体のニーズが充足されていくと次は産業廃棄物処理業界に進出。当時問題視されたダイオキシン類による環境汚染問題へいち早く注目し、同業界向けに廃棄物を炉に入れる前に一定の大きさにする破砕機を手がけた。1999年制定のダイオキシン類対策特別措置法を意識し、業界で機械装備の需要が高まったことも相まって販売も好調だった。次第に業界内の機械装備率が上がったため、現在は新たな市場として非鉄金属スクラップの処理へと業態を広げている。

開発は3本の柱で

 和田社長は「1億2000万人程度の日本人口。我々はその中で、ある一つの業界を狙って機械を販売するニッチな産業。時代のニーズに合わせて技術を転用するため、技術開発に注力する」と強調する。2014年に新設した「近畿メカノケミカル研究所」では、専属で6人の研究員が新技術の開発、要素技術開発、用途開発の3本の柱に取り組んでいる。

 新技術では、商品化はまだ先だが触媒を使う技術の開発を進める。化学の知識に詳しい社員がほとんどいないのが課題だが、2017年から兵庫県立大学の協力のもと、社内研修「産業人材育成スクール」において化学の知識や機械・ロボット制御、機械工学分野の技術者育成を強化し、研究に生かしている。

 要素技術はレーザー溶接機を使った造形技術などを研究し、自社の生産技術に応用する。将来的には自動化技術を開発し、自社製品としての商用化を見据えている。用途開発においては既存の商品を軸に技術提案、商品提案を行う。東京、名古屋、神戸、九州など全国に拠点を展開するネットワークの強みを生かし、営業マンが企業のニーズを迅速に捉えて自社の技術や商品を提案し、顧客企業の課題解決、企業力アップに貢献している。

バーゼル条約に着目

 2015年に発売した、工業系雑品スクラップを破砕し鉄、銅線、アルミなどに選別して回収できる業界初の「スーパーシュレッダー」も用途開発の中から生まれた製品だ。家電製品や自動車から出る黒モーター、ダイナモ、セルモーターなどは工業系雑品スクラップとして回収されるが、分解については専用工具で人手に頼っているのが実情で、コスト高からその多くが中国に輸出されている。しかし5-6年前からバーゼル条約に違反しないよう国が国内での適切な処理を推奨してきた。和田社長はこの施策にいち早く着目。自社の技術を応用して「スーパーシュレッダー」「Vバスター」を開発、現在もリサイクル業者などから問い合わせが相次ぐ。

 今後は「ロボット技術とAIを使った新たな商品開発を計画している」(和田社長)と、挑戦は続く。工業用ロボットに自社独自開発のセンサリング技術を組み合わせ、廃棄物処理場のようにランダムに処理物が流れてくる現場で、対象物を選別しながら破砕機へ投入する技術の提案を始めた。破砕機とロボットシステムを一体化した自社開発商品としての販売を目指す。

和田直哉社長
和田直哉社長

 設備投資も積極的だ。破砕機の重要部分である刃物の生産設備を拡充すべく、2019年夏には約15億円を投じ、新工場の稼働も予定する。機械設計部門には3次元CADシステムを本格導入し、生産能力を上げる計画だ。

 年次や職種に合わせた社内外研修なども充実させており、人材育成も重視。地元の大学生や高校生を毎年積極採用し、兵庫県の若者転出を防いでいる。資材などの購入は可能な限り地元企業から購入するほか、和田社長は県の労働委員会や発明協会、新産業創造研究機構(NIRO)などの役員なども務め、地域活性化の一役も担う。地域のモノづくり中核企業として、着実に発展を遂げている。

【企業情報】
▽所在地=兵庫県神戸市中央区栄町通4-2-18(本社)▽社長=和田直哉氏▽創業=1948年6月▽売上高=50億円(2017年7月末)

あわせて読みたい

ブランクを経て働くということ

政策特集

ブランクを経て働くということ

活躍の場は大企業だけじゃない

政策特集

活躍の場は大企業だけじゃない

社会課題の原体験が企業を、個人を目覚めさせる

政策特集

社会課題の原体験が企業を、個人を目覚めさせる

社会人のチカラは幼少期から 没頭体験が思考力を養う

政策特集

社会人のチカラは幼少期から 没頭体験が思考力...

スキルの賞味期限は短い 人材力を高めよ

政策特集

スキルの賞味期限は短い 人材力を高めよ

先端技術を積極活用、成長市場に活路

政策特集

先端技術を積極活用、成長市場に活路