統計解説

生産活動が増えれば人手が必要・・とは限らない

業種ごとに求人意欲を検証

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人手不足で話題になりがちな、「介護事業」、「飲食店・飲食サービス業」、「建設業」、「運輸業・郵便業」に焦点をあてて、分析の結果を見てみる。

ミニ経済分析「いわゆる人手不足業種の背後にあるものは何か?;求人意欲と、アウトプットレベル、労働生産性の関係」では、 業種毎の求人意欲を、求人率データから検証した。アウトプットレベルと求人意欲の関係を相対的に見ることで、一般に考えられているように「アウトプットレベルが上がると、人手不足になり、求人意欲が増す」という関係にはない業種が多くあり、業種毎の求人意欲の背景が様々であることを明らかにした。

業種別の求人意欲を測る「求人率」

人手不足の指標としては、有効求人倍率(厚生労働省「一般職業紹介状況」)がしばしば用いられるが、残念ながら業種別の動向がわからない。そこで、業種別のデータが入手できる求人数(同調査)を、雇用者数(総務省「労働力調査」)で割ったものを「求人率」として、求人意欲の指標と見做し、その推移を確認した。

求人率は時点毎に基準化されていることから、その水準の推移を見ることは、求人のボリュームではなく、求人意欲の強さの推移を見ていることになる。また同様に、業種間で水準の高低を比較することは、求人意欲の強さを比較していることになる。

やはり人手不足の業種は求人意欲レベルは高い

下のグラフは、2016年度の求人率の水準を基に、業種を3つのグループ(上位13業種、中位13業種、下位13業種)に分けてプロットしたものだ。

求人率が最も高いグループ(左グラフ)の中に、「介護事業」、「飲食店・飲食サービス業」、「建設業」、「運輸業・郵便業」が含まれているのが判る。なお、求人率が最も高い「各種商品小売業」では、2016年度の求人率は46%でした。ほぼ、雇用者数2人に対して1人の求人が出ているということになる。「介護事業」は40%、「飲食店・飲食サービス業」は36%と、人手不足で話題になる業種の求人意欲は、確かに高水準だと言える。

リーマンショック前と求人意欲を比較してみると

しかし、業種毎の求人率をリーマンショック前と比較すると、当然ながら、近年全ての業種が求人意欲を高めているわけではない。下の表は、各業種の求人意欲を、リーマンショック前にあたる2003~2004年の平均値と、最近の2015~2016年の平均値で比べて、「上昇」、「横ばい」、「下落」にグルーピングした結果だ。

この結果を見ると、製造業の主要な機械工業(「輸送機械工業」、「電気機械工業」、「はん用・生産用・業務用機械工業」、「情報通信機械工業」等)は、下落グループに含まれている。サービス業では、「情報サービス業」や「金融業・保険業」も、下落グループに含まれる。

また、人手不足と言われる業種の中では、「介護事業」や「飲食店・飲食サービス業」、「建設業」は上昇グループに入るが、「運輸業・郵便業」は、意外なことに横ばいだ。

求人意欲と活動指数を重ねてみると・・・

一般に、生産活動が増えれば人手が必要になり、求人意欲が高まると考えられる。求人意欲の背景を探るために、アウトプットレベルについても、リーマンショック前にあたる2003~2004年の平均値に比べて、最近の2015~2016年の平均値が「上昇」しているか、「下落」しているか、「横ばい」か、で整理したものが下の表だ。

「アウトプットレベルが増えれば、人手が必要になり、求人意欲が高まる」という関係を見せているのは、表中、色のついた対角線上のグループに属する業種だ。これらの業種は、分類した39業種中16業種と半分以下だった。「飲食店・飲食サービス業」、「介護事業」らは、まさに「アウトプットレベルが増えれば、人手が必要になり、求人率が上がる」のグループに位置づけられている。

他方で、「運輸業・郵便業」は、リーマンショック前と比較するとアウトプットレベルは上昇しているのに、求人意欲は横ばいのままだ。これが可能であった背景には、生産活動の効率化、現有人員の高稼働、労働から資本への乗り換え等が考えられる。

また、「建設業」は、アウトプットレベルは下がっているのに、求人意欲が高まっている。この謎を解くために、労働生産性(アウトプットレベル/雇用者数)の推移と要因分解を見たところ、建設業では、過去に雇用減による労働生産性の向上を進めてきていたことが判った。求人率を高めたのは、それにも限界が来たからかもしれない。

このように、求人意欲の変化をアウトプットレベルとの相対関係でみることは、業種によって異なる求人意欲の「単純ではない」背景事情を探る一端になる。

関連情報
介護や飲食サービスは忙しくて求人意欲も高い。運輸や建設は少し様相が違う;業種別の求人意欲の違いを可視化。

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