METI Journal

経産省

内なる国際化 vol.6

外国企業進出の今、昔

世界で高まる誘致熱

かつてジャーディン・マセソン商会が進出した場所(横浜市、シルクセンター国際貿易観光会館)
かつてジャーディン・マセソン商会が進出した場所(横浜市、シルクセンター国際貿易観光会館)

 外資系と言うと、どんな企業が思い浮かぶだろうか。オシャレで最先端なイメージ、それとも能力主義が徹底した厳しい世界。社会にしっかりと根付いてしまって、もはや特別な存在ではないと考える向きもあるかも知れない。実際、創業100年を迎える企業だってある。ただ、これまで外国企業が持ち込んできた先端技術や新しいサービスなどが、日本の産業社会に画期をなしたことは一度や二度ではないのは確かだ。今後もどれだけの外国企業が日本に魅力を感じてくれるかが、我が国の成長には欠かせない視点だろう。

江戸末期に遡る外国企業進出

 日本には、国内の外資系企業を対象とする統計調査「外資系企業動向調査」(以下、外資調査という)があるが、国が統計調査を始めるずっと前に、日本に初めて進出したと言われる外国企業の進出地をご存じだろうか。横浜港の大桟橋のすぐそばにシルクセンター国際貿易観光会館が建つ。ビルの中にはシルク博物館があり、横浜港で昭和初期まで輸出額の大きな部分を占めた生糸や絹織物の歴史をたどることができる。長崎、箱館とともに横浜が貿易港として開港された江戸末期の1859年頃、居留地だったこの地に英国系総合商社ジャーディン・マセソン商会が進出した。当時の建物はすでにないが、「英一番館」として地元で親しまれたという。

 外国企業の進出が本格化したのは、1945年の戦後からだ。1949年には経済的にも疲弊し弱体化していた国内産業を保護する目的で、外国と取引する際のルールや方法を定めた法律「外国為替及び外国貿易法(外為法)」が制定された(対外取引を制限する考え方は、1998年に対外取引が完全自由化されるまで続いた。)が、ちょうど米国の大企業が国内での利潤率低下などを理由に積極的に海外投資を始めたことなどと重なり、外国企業の進出は本格化していった。当初は石油、化学、機械など基幹産業に対して資本参加する形が多く、投資規模も大きなものが多かった。1960年頃になると、基幹産業に加えて食品や繊維、紙・パルプなど消費財部門での進出も目立ち始め、中堅企業も多くなる。同時に欧州企業も増え始めた。

当初は米国系が圧倒

 このころ、第1回外資調査(1967年)が開始された。この時の対象企業数は611社で、有効回答の519社のうち、米国系が332社と3分の2を占めた。そのほか欧州系133社、その他の地域が54社あるが、実際は欧州や米州の子会社を通じて米国企業が投資を行っていた例もあるため、米国の存在感は圧倒的だったと言えそうだ。業種では製造業が6割を占め、化学や一般機械、電気機械のウェイトが大きい。外食産業の巨人であった米マクドナルドが日本に進出したのもこの頃(1971年)である。

 今では外資調査は第50回(2016年)を数え、この半世紀の間に企業数が大きく増えているだけでなく、その中身も大きく変わった。かつて基幹産業への技術導入を目的とした対日投資が、今では対日投資の目的の多くが日本の市場性に期待したものに変わっていることも、以下の表からも分かる。

日本側出資会社の動機(第1回調査)
日本側出資会社の動機(第1回調査)
日本で事業展開する上での魅力(複数回答、第50回調査)
日本で事業展開する上での魅力(複数回答、第50回調査)

 業種の内訳も、第1回調査時に6割を占めていた製造業の比率は今では18.4%まで低下。その代わりに、卸売業が39.1%とトップに立ち、サービス業(14.2%)、情報通信業(10.9%)と続いている。

 企業の母国の内訳も大きく変わり、アジア系企業の存在感が高まり、第50回調査では集計企業数3,410社のうち25.7%(前年度比1.9ポイント上昇)を占めている。もちろん25.1%を占める米国系企業や、43.5%の欧州系も依然として存在感を示してはいるが、どちらも全体に占める割合はじわじわ低下傾向にある。

 対内直接投資残高はリーマンショック後の一時を除いて着々と拡大しており、2016年末では過去最高の27.8兆円に達した。政府では2020年までに同残高を2012年時点から倍増となる35兆円にすることを目標に掲げている。ただ対内直接投資残高のGDP比率では、2016年末時点でわずか5.2%にすぎず、198カ国のうち190位と低迷。2020年の目標が達成できたとしても、それでもまだ決して高い水準ではない。伸ばす余地はまだまだ大きい。

 世界経済の成長を取り込むためにも外国企業の日本への投資を活性化させるには、どうしたらよいだろうか。

 米国をはじめ世界各地で企業の誘致合戦が繰り広げられる中、最近では外国企業の誘致に力を入れる自治体も少なくない。外資系企業の本社立地では歴史的に東京都、神奈川県、大阪府の上位は揺るがないが、2005年から2015年までの10年間で3倍増(10社から30社)と大きく伸ばした福岡県のような例もある。また、経済産業省が隔年で行っている外国企業の投資関心度調査では、アジアの国・地域の中で、ビジネス拠点機能別の魅力ある投資先として、日本は「研究開発拠点」で3期連続首位(2013年度、2015年度、2017年度実施。2017年度は公表前)となっている。外国企業の日本への関心をみすみす逃す手は無い。誘致が成功するか否かは、国だけでなく自治体の意気込みや姿勢によっても結果が違ってくる。今後の動向に期待したい。

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