METI Journal

経産省

エネルギー vol.6

世界の原発はどうなっているのか?

引き続き重要な役割も、各国で分かれる対応

※1 韓国では5基の建設が続行(うち、新古里5・6号機については、討論型世論調査を実施した結果、建設の継続を決定)※2 スイスは運転期間の制限を設けず
※1 韓国では5基の建設が続行(うち、新古里5・6号機については、討論型世論調査を実施した結果、建設の継続を決定)※2 スイスは運転期間の制限を設けず

 東日本大震災により東京電力の福島第一原発が深刻な事故を起こした。このため、国内では一時期、すべての原発が運転を停止。海外でも、ドイツ、台湾、スイス、韓国が脱原発へと舵を切った。その一方で、エネルギー安全保障、地球温暖化対策、発電コストといった観点から、引き続き原子力を利用する国も存在する。例えば、電力需要が増加する中国やインド、発展途上の国々は原発の建設や導入計画を積極的に進めている。

長期的には重要な役割

 世界全体でみると、IAEA(国際原子力機関)は、①発展途上地域における人口や電力需要の増加②気候変動や大気汚染への対策の必要性③エネルギー安全保障④他のエネルギー資源価格の変動などの潜在的な要因から、長期的に原発が引き続き世界の電源構成において重要な役割を果たすと見込んでいる。ここで、各国における原発の利用状況や政策について紹介していきたい。

米、稼働率向上に成功

 世界の原子力利用を先導したアメリカでは、現在99基が稼働している。その多くが1980年代までに稼動したものであり、うち86基が寿命を60年へ延長している。総発電量に占める原発の比率は約20%だ。スリーマイル島原発事故の後は、原子力への不信が高まり、発電所の稼働率が低下すると共に、新規建設も久しく途絶えていた。しかし、20年以上の歳月をかけてより高い安全性を確保し事故以前よりも稼働率を向上させることに成功。近年は、卸電力価格の下落で経済性の観点から老朽化した原発が閉鎖されるケースがある一方、低炭素電源としての価値が着目され、原発への政策支援を行う動きも見られる。なお、足下で複数の原発プロジェクトが進行中だが、約30年間新規の建設案件がなかったこと等により、建設費の増加といった課題も生じている。

(出典)旧独立行政法人原子力安全基盤機構「原子力施設運転管理年報」(平成25年版)米国原子力エネルギー協会ホームページ より資源エネルギー庁作成
(出典)旧独立行政法人原子力安全基盤機構「原子力施設運転管理年報」(平成25年版)米国原子力エネルギー協会ホームページ より資源エネルギー庁作成

英は低炭素電源として推進

 イギリスもまた原発を黎明期から利用している。現在では15基が稼働(原発比率は約20%)しているが、老朽化が進んでいることが課題だ。2050年までに温室効果ガスを1990年比で80%削減する目標を法律で定めており、政府は原発を重要な低炭素電源と位置づけている。2013年12月には原発や再生可能エネルギーなど低炭素電源を対象に「差額決済契約制度」の導入を決め、売電収入の安定化によりこれらの事業の予見性を高める道筋をつけた。8つのサイトで原発の新設計画があるが、国内では関連技術が既に衰退してしまっており、主に海外の事業者によって開発が進められている。

 フランスは58基が稼働し、原発比率は7割を超える。前政権で「エネルギー転換法」が成立し、2025年までに原発比率を50%まで引き下げる方針をかかげたが、マクロン現政権はこの達成時期を5~10年程度延期することを決めた。政府は見直しの背景として、原発の閉鎖を進めれば、代わりに石炭火力発電所を稼動させることが必要となり、二酸化炭素の排出量増加が避けられない点を指摘している。

 ドイツでは7基が稼働(原発比率は約13%)しているが、福島第一原発事故を受けて、あらためて脱原発の方針を表明した。2022年までに全原発を閉鎖することを決定し、再生可能エネルギーの利用拡大を進めている。電力の安定供給のために、石炭火力発電への依存度が高くなっており、温暖化対策との両立をはかる必要も生じている。

世界市場で高まる中国の存在感

 近年、世界の原子力市場で存在感を増しているのが中国だ。初めて原発を稼働した1994年以降、急速に導入を進め、アメリカ、フランスに次ぐ37基を保有(原発比率は約4%)しており、2020年には現状の8割増の規模にまで拡大する計画だ。福島第一原発事故を受けて内陸部での建設は凍結しているが、沿岸部で開発を継続している。さらに技術を国産化した上で、パキスタンやアルゼンチンなど新興国向けの原発輸出に積極的に取り組んでいる。

 韓国では、24基が稼働(原発比率は約30%)している。文大統領は脱原発を宣言し、昨年10月に、「エネルギー転換(脱原発)ロードマップ」を決定して、新規建設計画を全面白紙化した。ただ政府は、脱原発を国民生活に支障が起きないように少なくとも60年以上の時間をかけて漸進的に進めると説明しており、建設中だった新古里5、6号機については、討論型世論調査を行った上で建設再開を決定している。

           
           

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資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ 特集記事「世界の原発利用の歴史と今」

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