政策特集物流クライシス 突破の処方箋 vol.2

共同配送で物流の危機に新風を吹かせる

動脈物流委員会の酒井祐史委員長(右)と松田和也副委員長(左)

 物流需要は増える一方で、輸送能力は低下する。需給のバランスが崩れ、モノが運べない事態が到来する。こうした物流の危機に対応するため、事務機器メーカーなどで組織しているJBMIA(ビジネス機械・情報システム産業協会)が立ち上がった。共同配送という難事業で、新風を吹き込もうとしている。この物流改革の行方を探った。

各事務機器メーカーが率直に意見交換

 共同配送を検討するJBMIAの「動脈物流委員会」の酒井祐史委員長は、「まず物流の現状について各事務機器メーカーが率直に意見交換することから始めた」と振り返る。

 事務機器分野で競合する各社の担当者が、利害関係の多い案件について、真剣に向き合って、議論することは極めて珍しい。それだけ各社が直面する物流の状況が厳しいことを物語っている。そこで、共同配送を検討するに至った背景について、整理してみる。

 事務機器メーカーは、共通の課題を抱えている。例えば、複合機など機器は月末や期末に納品が集中するのに加えて、時間指定が10時と13時に集中するなど、物流波動(物流の波)が大きい。また、注文から納品までのリードタイムが短く、受注日当日出荷といった、高いサービスレベルも、物流負荷の要因となっている。さらに、地方配送や閑散期配送については、低積載配送が常態化しつつある。国土交通省によると、積載効率は40%程度で、近年一貫して下落傾向にある。半分は空の状態で、配送しており、欧州の積載効率約57%と比べると低水準にとどまっている(国土交通省「自動車輸送統計年報」)。こうした状況が、現在の物流危機の状況と重なって、輸送費のコストアップにつながり、各社の経営を圧迫している。

松田副委員長

競争から共創へ

 政府は、深刻化が続くトラックドライバー不足に対応し、物流機能を安定的に確保するため、「ホワイト物流」推進運動を2019年から実施している。これに歩調を合わせて、JBMIAは業界として、「ホワイト物流」自主行動宣言をし、物流の改善に取り組む方針を打ち出している。

 こうした物流をめぐる流れの中で、物流見直しの一環として、事務機器メーカーの大手各社が共同配送という解決策の実現に向けて、結集したというわけだ。

 松田和也副委員長は、「安定した配送をはじめ、配送コスト上昇の抑制、二酸化炭素(CO2)の削減について、協会として解決していく方向性がまとまった」とし、共同配送のビジョンを披露する。

 この方向性は、物流を従来の「競争」から新たに「共創」領域と位置づけたうえで、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、「運べないリスク」という社会的な課題に共同配送というソリューションで解消していくという狙いがある。

 動脈物流委員会は、議論の結果、共同配送に向けて、具体的に5つのコンセプトを掲げる。

 1、「競争」から「共創」の精神の下、持続可能な社会の実現に貢献し、「運べないリスク」を解決する。

 2、物流品質・コンプライアンス(法例順守)に留意し、共同物流により効率化を図り、コストの上昇を抑える。

 3、納品基準の標準化・納品波動の平準化を推進し、お客様への適切なサービスと安定した配送サービスを実現する。

 4、行政と政策と連動し、社会的課題の解決を図る。

 5、賛同できる企業からスタートし、いつでも参加を可能とする。

 共同配送の当初の参加メンバーは、9メーカーと6販社の合計15社で構成する。松田副委員長は「国の物流課題解決に貢献するには、個社では対応が難しいので、複数の社が協力していく」としたうえで、「最初からすべてをやるのは無理があるため、仕組みをみんなでつくって、まずできるところから実施していく」とし、着実に共同配送を進めていく考えを示した。

第一段階はラストワンマイルの共同配送

 では、共同配送はどのような青写真を描いているのだろうか。

 松田副委員長は、「どのような範囲とするかが一つの大きな検討課題だ」とし、最初のハードルに力を込めた。

 各メーカーは、現在本部の物流拠点から各地域の物流拠点へ、そこから顧客に近い最終的な物流倉庫へ運び、それぞれの顧客へと配送している(ラストワンマイル)。動脈物流委員会が描いているのは、本部物流拠点から各地域の最終的な物流倉庫の幹線輸送部分と、ラストワンマイルの領域を動脈物流と位置づけて、ここを共同配送化していく未来図を描く。

 共同配送の実現までのスケジュールはどう描いているのだろうか。

 松田副委員長は、「まず第1フェーズとして、いわゆるラストワンマイルを対象とする」とし、当面、最終的な物流倉庫から顧客までを共同配送のターゲットに定めている。扱う製品は複合機を当面の対象とする。

 その後、松田副委員長は「第1フェーズが軌道に乗ってきたら、幹線輸送に入っていく。なるべくスピード感をもって展開していく」と、本部の物流拠点から地域の物流拠点、最終物流倉庫までの幹線輸送を対象とする考えだ。

納品基準の標準化が重要

 共同配送を実現していくうえでの課題について、松田副委員長は、「共同配送を実現するうえで、ホワイト物流の視点を踏まえた納品基準の標準化が重要」と強調し、各社の足並みを揃えていくことに集中する考えだ。

 現在、各社ごとに納品基準がばらばらなことから、議論しながら、つくり込みをしていく必要がある。すでに具体的な詰めの作業に入っており、ほぼ固めつつある。基準を合わせるには、各社の利害調整をいかに円滑に進めていくのかがカギになる。一つひとつきめ細かく丁寧に説明し、同意を得ながらの手探りの作業となるに違いない。

共同配送での積み込みの様子

トラックの台数の削減で輸送コストの圧縮へ

 実現に向けて、2020年10月に積載率が低いエリアで実施調査を行った。調査の結果共同配送での大きな問題はなく、効果も確認できたという。

 展開計画の検討にあたり、2019年度の各メーカーの納品場所をインプットして、配送密度(どれぐらいの頻度で配送しているか)を調べ、配送状況を可視化した。これによって、1日平均の配送が多い地域と少ない地域が鮮明になった。東京、大阪、名古屋といった大都市圏は配送密度が高い。一方で、北海道や北東北、九州といった地域は配送密度が低い。同じ県内でも、県庁所在地は密度が高く、遠方の地域は低いという結果が得られた。今年度中に、実施地域を選定し、共同配送の展開スタートを目指す。

 共同配送をどのエリアで実施するかについては、今後の検討課題となっている。効率化がどれぐらい図れるかがポイントになる。積載効率の良くない地方がまず対象となるのは間違いない。

 動脈物流委員会は、共同配送のシミュレーションを試みている。あるエリアで、仮に月平均で300台のトラックを使っていると、共同配送により同250台程度に減らすことができる。さらに時間指定の平準化やリードタイムの延長などが実現できれば、同150台程度とおよそ半分に減らすことができる結果を得たという。

 こうしたシミュレーション結果やエリアの状況、各社の置かれた環境などを勘案しながら、エリアとサービスレベルを決めていく考えだ。

 仮にトラックを半分程度にできたとしたら、大幅に積載率が向上し、現在の物流危機に対して大きな貢献が期待できる。当然、輸送コストの上昇抑制につながり、経営への追い風になるのは間違いないだろう。

 今後、動脈物流委員会は、複合機以外の製品も対象に加えて、製品ごとに納品基準の標準化を検討していく。合わせて、他の業界との連携も模索していく考えだ。今後、共同配送に向けた道のりにはいくつものハードルがあるには違いないが、大きな一歩を踏み出したと言える。

※次回は、ロボティクス分野での先進事例として、ラピュタロボティクス、楽天、パナソニックの取り組みを取り上げる。