60秒解説

【フードテックの旗手】植物工場の概念一新 密閉空間で完全制御

プランテックスが描くビジネス戦略

完全密閉型の植物栽培装置。装置内部に栽培中の野菜が見える

 東京のオフィス街、京橋にある建物の一室。足を踏み入れると、ガラス越しに巨大な箱形装置が目に飛び込んでくる。ここで栽培されているレタスは「京橋レタス」として、すでに都内の一部スーパーの店頭に並ぶ。

生産性向上と安定収穫を実現

 これは農業スタートアップのプランテックスが開発した人工光型植物栽培装置である。栽培棚ごとに独立した完全閉鎖の環境下で成育をコントロールしながら野菜を栽培することで、生産性向上と工業製品並みの安定収穫を実現したのが特徴だ。
 植物の生育に不可欠な要素は光と空気、養液だが、同社は植物の成長に影響を与えるこれらを20種類の制御項目を精緻かつ個別に制御する独自技術を持つ。壁面に掲示されたモニターに、温度や二酸化炭素(CO2)濃度、循環養液量、光合成速度など装置内の環境や植物の成長データが映し出されるさまは、一般的な植物工場のイメージを覆すインパクトがある。

金融機関や出版社が立ち並ぶ東京・京橋の一角にある本社「PLANTORY tokyo」

 2014年の創業当初は、これら制御ソフトを中心とするコンサルティングサービスを展開していたが、2018年には、これまで蓄積したノウハウを結集した植物栽培装置を開発した。さらに2020年には、マルエツなどを傘下に持つ流通大手、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)との間で協業に合意。USMHの独自の野菜ブランド「green growers(グリーン・グロワーズ)として、商品開発から生産、販売まで一貫した製造小売りモデルとして展開する予定だ。

ものづくりの発想生かす技術者集団

 ものづくりの世界では当たり前の生産管理の発想を農業分野に生かす開発姿勢は、創業メンバーの背景とも無縁でなさそうだ。同社の経営陣は大手電機メーカー出身などほとんどがエンジニア。山田耕資(こうすけ)社長の実父で会長を務める山田眞次郎氏は日本の金型産業に革新を起こした「インクス(現SOLIZE)」の創業者としても知られる。

「世界の食と農に新たな常識を生み出したい」と語る山田耕資社長

 こうした次世代の植物工場は、担い手不足や頻発する異常気象、食料生産の安定化といった農業が直面する課題を解決し、さらには究極の「地産地消」を実現する手段としても期待が大きい。しかし、山田社長はこれにとどまらず、「植物工場でしか実現できない新たな価値を生み出したい」と考えている。閉鎖環境下で緻密な生産管理を行えば、例えば成分をコントロールした新たな品種を開発することも現実味を帯びてくる。

目指すはプラットフォーム企業

 目指すビジネスモデルは植物工場のプラットフォーム企業。栽培技術を中核に、市場が求める品種を追求する研究開発機能と量産機能をシームレスに連携させる姿を描いている。クボタからの出資をもとにマザー工場の建設予定もあり、さらに効率的かつ安定的な生産が可能であることを実証する構えだ。

2022年にも建設予定のマザー工場のイメージ

 日本が長らく製造現場で培ってきた生産技術や品質管理のノウハウ。これらが農業の世界でも新たな競争力の源泉となる日は近い。