60秒解説

【フードテックの旗手】食用コオロギの量産化に挑むグリラス

食料危機救う代替たんぱく源として有望視

グリラスの経営陣。後列中央が渡邉さん

人口増加に伴う食料危機が世界的な課題となるなか、持続可能で飼料効率性に優れ、かつ栄養価も高い代替たんぱく源として、昆虫食が注目されている。徳島大学発スタートアップのグリラス(徳島県鳴門市)は、昆虫食の中でも、食用コオロギの可能性に着目し、商品化や量産技術の確立を通じて市場を切り拓きつつある。最高経営責任者(CEO)の渡邉崇人さんは、コオロギが「日常的な食の選択肢のひとつ」になる未来を描いている。

無印良品で買えるせんべい

同社は長年にわたり、食用コオロギの機能性検証と食糧資源化を研究していた徳島大の知見を基礎に、同大大学院助教でもある渡邉さんらが2019年に設立した。
国連農業機関(FAO)も、食料危機を救う代替たんぱくとして推奨する昆虫食。その理由は家畜に比べ生産時の二酸化炭素(CO2)排出や成育に必要な水分、エネルギーが極めて少なく、飼料も食品残さで賄えるなど環境負荷が小さい点にある。とりわけコオロギは他の昆虫に比べても食味が高いとされ、粉末状に加工されたものが、菓子やラーメン、パンなどに利用されている。
グリラスにとって、一般消費者に認知度を高める転機となったのは「無印良品」を展開する良品計画と協業し、2020年に発売された「コオロギせんべい」。環境意識が極めて高い、限られた消費者だけでなく「広く一般消費者との接点が生まれ、昆虫食を知ってもらう機会になった意義は極めて大きい」(渡邉さん)からだ。「エビのような香ばしい風味」と評判は上々だ。

無印良品で販売しているコオロギせんべい。55グラム入り190円(税込み)

自動飼育システムを共同開発

現在、力を注ぐのは今後の市場拡大を見越した量産体制の構築と、それに裏付けられた商品群の拡充だ。トヨタグループの機械メーカーであるジェイテクトと共同開発を進めるのは、食用コオロギの自動飼育システム。グリラスの飼育技術とジェイテクトの自動化技術やデジタル技術を組み合わせ高品質なコオロギを効率的に飼育。こうして生産された食用コオロギはパウダーなどに加工され、さまざまな分野への利用が見込まれるほか、飼育システムそのものの外販も目指している。
先進技術で食生活を変革する「フードテック」をめぐっては、国内外の企業の参入増で競争激化が予想される。日本はどこに競争優位性や差別化戦略を見いだすことができるのか。渡邉さんはこう指摘する。

日本のモノづくり力に競争優位性

「いま、私たちが進めている量産技術をはじめとする、日本ならではのきめ細かなモノづくり力と、おいしさをとことん追求する姿勢。この二点は大きなアドバンテージになると確信しています。地球環境への配慮と食がもたらす喜びはトレードオフではなく、両立するものではなければフードテック市場は広がっていかないでしょう」。
同社の知見のベースはアカデミアの世界にあるが、食の世界は、嗜好(しこう)やニーズが国や地域によって多様かつ文化的な違いも大きい。それだけに、市場拡大に向けた今後のビジネス戦略はひときわ注目される。