統計解説

高い持ち家率 観光消費も急増中 データで見る「埼玉」の魅力

映画「翔んで埼玉」でも注目

 
 埼玉県と言えば、2019年に映画『翔んで埼玉』の実写化が話題となった。埼玉県民である筆者は、埼玉県民にしか伝わらないような細かいご当地ネタが所々にちりばめられていて非常に楽しく観たが、あの作品で埼玉県について意識した方もいるのではないだろうか。
 毎年、ブランド総合研究所が行っている「地域ブランド調査」の2020年版が2020年10月14日に公表されました。7年連続で最下位だった茨城県が過去最高順位の42位と躍進し話題となったが、実は埼玉県も38位と過去最高順位に上昇した。今回はそんな埼玉県について、人口や商業、観光などの状況をみてみる。

1世紀近く人口が減ったことがない

 総務省が公表している人口推計の人口増減率をみると、2019年(2018年10月~2019年9月)に人口が増えている都道府県は全国で7都県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、沖縄県)のみとなっているが、実は埼玉県は、国の人口推計では1920年の開始以降、人口が減少していない唯一の県となっている。

堅実な暮らしぶり

 さて、そんな人口の増え続けている埼玉県だが、人口と関係の深い商業の動向を見てみよう。商業統計調査(経済産業省)をもとに、小売業の年間商品販売額と、県民1人当たり商品販売額をみてみると、埼玉県は2007年から2012年にかけてはリーマンショックや東日本大震災の影響もあり減少したものの、その後2016年までは順調に増加を続けていた。ただ2019年には、景気後退の影響もあってか微減となった。
 なお、首都圏一都三県の中で比較してみると、埼玉県の県民1人当たり商業販売額は最も低いようだ。東京都との所得差や、埼玉県民は買い物と言えば東京に行くとも言われ、その影響も考えられるが、それだけではないかもしれない。

 家計調査(総務省)で各都県庁所在地の勤労者世帯(二人以上の世帯)の平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)をみてみると、実は埼玉県は、一都三県の中では傾向的に最も低くなっている。埼玉県民の方は、他の都県民の方と比べると、あまりお金を使わず、堅実な暮らしをしているという面もあるかもしれない。

 一方で埼玉県では、持ち家比率をみてみると、2000年代に入り千葉県とデッドヒートを繰り広げてはいるものの、直近2018年度では一都三県の中では最高水準にある。埼玉県民は買い物や家賃などにお金をかけるより、家を持つという方も多そうだ。

近場の人気日帰り観光スポット

 観光地としてはまだまだ認識されていない埼玉県だが、最近は、大宮や川越・秩父など、テレビの旅番組などで取り上げられることも多くなり、皆さんも一度は目にしたことのあるではないだろうか。次に、そんな埼玉県の観光の状況についてみていきたい。
 まず、埼玉県の観光消費額の推移を県が推計している観光入込客統計調査でみてみると、2011年の調査開始以降、2018年までの7年間で、観光消費額は3倍に急増した。2019年は一転、減少となったが、埼玉県内にも大きな被害をもたらした台風19号の被災や景気後退の影響もあるかもしれない。
 また、旅行の形態(外国人を含む)を宿泊旅行・県内からの日帰り旅行・県外からの日帰り旅行別にみてみると、県内・県外からの日帰り旅行がほとんどであることがわかる。宿泊旅行についてはまだまだだが、日帰り旅行では県内が5割強を占めており、県民にも近場の日帰り観光スポットとして親しまれているのではないだろうか。

 埼玉県内でも観光客数の多い、さいたま市・川越市・秩父市について、市町村観光入込客の推移をみてみると、さいたま市はさいたまスーパーアリーナや鉄道博物館などの人気の施設が複数あることから2011年以降、増加傾向にある。また、川越市についても都内からのアクセスの利便性やここ数年、テレビで取り上げられる回数が増えたことからか増加傾向にある。一方、秩父市については、テレビでも取り上げられているものの、観光客数は2019年は2年連続の減少となっている。

 埼玉県と言えば、もしかすると映画『翔んで埼玉』で初めて意識した方もいるかもしれないが、統計データでみてみると、人口は1世紀近くにわたり都道府県で唯一増え続けており、持ち家比率も首都圏一都三県で最も高く、近年は観光消費も急増している。実は知る人ぞ知る埼玉県なのではないだろうか。
 最近は新型コロナウイルス感染症の拡大により、住まいを都心から郊外に目を向ける方も増えているようだ。2018年に発表された国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口では、埼玉県の人口も2025年までには減少に転ずる見通しだが、コロナ禍の影響で今後変わることもあるかもしれない。もっとも、埼玉県だけでなく、それぞれの地域に良さがある。単にイメージや認知度だけでなく、データでそれぞれの地域を見ることで、それまで気付かなかった一面も見えてくるのではないだろうか。