統計解説

10年ぶりに低下傾向に転じた貸事務所業 都内の空室率が上昇

コロナ禍で在宅勤務増加 オフィス需要減退


 経済産業省で作成している第3次産業活動指数では、さまざまなサービス業の活動量の動向を指数化し、公表している。今回は不動産業の中にある「貸事務所業」について、動向をみてみる。
 第3次産業活動指数における不動産業は、大きく分けて不動産取引業と不動産賃貸業の2つの内訳業種からなっており、「貸事務所業」は不動産賃貸業の中にある。

2020年6月以降、じわり低下

以前公表したひと言解説でも、好調の続いた貸事務所業の活動に変調の兆しがみられることを紹介した。その後、実際どのように推移しただろうか。
 貸事務所業の季節調整済指数は、2010年秋頃より実に約10年にわたり上昇傾向が続き、2020年5月に109.7と現行基準最高を記録した。しかし、その後は一転して低下に転じ、6か月連続の低下で11月の指数値は107.4となった。
 三鬼商事株式会社の「オフィスマーケット情報」(札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡)により7都市計で空室率(空室面積(坪)÷貸室面積(坪))を試算すると、5月は1.99%とかなり低い水準であったのに対し、11月は4.02%となり、この6か月間で2.03%ポイントも上昇して、2017年4月以来、3年7か月ぶりの水準まで上昇していた。

空室率、7都市すべて上昇だが

 7都市別の空室率を5月と11月で比較してみる。東京が1.64%から4.33%(2.69%ポイントの上昇)、横浜が2.47%から3.92%(1.45%ポイントの上昇)、福岡が2.35%から3.58%(1.23%ポイントの上昇)など、7都市すべての空室率が上昇した。
 7都市のうち、特に東京の上昇幅が最も大きく、先に述べた7都市合計の空室率の上昇幅2.03%ポイントに対する東京の上昇寄与率を試算すると、約75%を占めており、東京での空室率上昇の影響が特に大きくなっている。

リーマンショック時と比べると

 過去に貸事務所業が低下した時期を接続指数も利用して調べると、2008年第1四半期から2010年第3四半期頃にかけて、リーマンショックを含む不況の影響により低下がみられた。ただ、当時は主要7都市の空室率の上昇度合いがほぼ同等だったのに対し、今回は先に見たように東京の空室率の上昇幅が他都市に比べて特に大きいという特徴がみられる。
 このことから、現状、貸事務所業の活動低下が進んでいる要因としては、新型コロナウイルス感染症拡大による景気の急激な悪化の影響も考えられるものの、今回はさらに、感染症の拡大により在宅勤務が増加し、オフィスや通勤で多くの人が集まる環境を回避しつつ、オフィススペースの縮小や賃料に対するコスト削減への意識が高まったことにより、オフィス需要が低下してきていることも要因として考えられる。

 このように、貸事務所業の活動は第3次産業活動指数でみることができ、不動産業のなかでは数少ないBtoB分野に該当する貴重な系列となっている。またその動きは、これまでみてきたように、景気動向の影響を受けるだけでなく、企業の行動変化を推し量る手がかりにもなる。