統計解説

企業の生産マインド 「弱気」ながらも改善の兆し

見通しには不確実性も

 
 経済産業省では、毎月初旬に、主要製品について生産計画を調べている。調査対象製品を製造する企業のうち、主要企業を対象に、その月と翌月の生産計画を調査している。
 今回は、6月初旬に調査した6月と7月の生産計画の状況と、6月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

6月の生産計画とその補正値

 6月の生産計画は、前月比5.7%の上昇を見込むという結果になった。この計画どおりに生産されれば、6月の鉱工業生産の実績は、5ヶ月ぶりの前月比上昇となる。
 さらに、7月の生産計画は、この6月計画の伸び率を上回る9.2%の上昇という計画になっている。
 ただし、今回の調査結果は、新型コロナウイルス感染症にかかる日本をはじめ各国の経済活動再開の動きの見通しが不透明な中での計画であり、実績と大きく乖離する可能性があることに留意する必要がある。

 毎月、生産計画に対して生産実績は下振れする傾向にある。そこで、調査月の結果については、その生産計画に含まれている実績からの「ずれ」を統計的に処理して、補正計算をしている。今回の調査結果で計算したところ、6月の結果については、前月比0.2%程度の上昇になるという結果だった。
 ただ、ここ最近、この製造工業生産予測調査での企業の生産計画値と実績値との乖離が極端に大きくなっている。企業が生産計画策定において、新型コロナウイルス感染症の影響を十分読めていなかったことがその要因として考えられる。
 こうした不確実性の増大により、計画値自体の精度が通常と異なることから、例年の傾向に基づく上の補正値と実績値が大きくずれる可能性もある。

バイアスを考慮すると水準低下も

 この生産計画の伸びを7月までの鉱工業生産指数に当てはめてグラフ化すると下のようになる。
 5月の鉱工業生産指数実績(確報)は78.7であるため、調査結果の伸び率5.7%をそのまま当てはめれば、6月の指数水準は83.2となる見込みだ。
 さらに、7月の生産計画は、前月比9.2%上昇の見込みであることから、仮に6月の生産が計画通りに達成したとすると、7月の指数水準は90.9まで上昇することになる。
 ただし、生産計画に対し生産実績は下振れするという傾向的なバイアスがあるため、このバイアスを補正すると、6月の伸び率は0.2%程度であり、指数水準は78.9に留まると見込まれる。
 また、7月の生産計画も同様のバイアスがあることを考えると、6月、7月の指数水準は、調査結果より低下することが考えられる。

計画と実績 乖離幅は増大傾向

 なお、先述のように、ここ最近、この製造工業生産予測調査での企業の生産計画値と実績値との乖離が極端に大きくなっていることから、6月も、上の例年の傾向に戻づく補正値を使った試算と生産実績が大幅に乖離する可能性もある。
 下のグラフは、今回の新型コロナウイルス感染症による影響が生じた後、生産計画(翌月見込値及び当月見込値)が、実績値と比べどの程度乖離していたかを示している。
 つまり、5月の19.2%は、4月初旬の調査での翌月(5月)見込値が、5月実績に対しどれほど大きかったかを表している。また、5月の7.3%は、5月初旬の調査での当月(5月)計画値が、5月実績値に対しどれほど大きかったかを表している。

 これをみると、今回の新型コロナウイルス感染症影響下では、本年4月、5月は、本年3月以前と比べると、企業の翌月見込値、当月見込値とも実績値との乖離が非常に大きく、企業の生産計画提出時点では、今回の感染症の影響を見通すことが困難であったことを示している。
 本年4月、5月は、日本でも新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けて緊急事態宣言が発出され、また諸外国でも外出禁止や都市封鎖(いわゆるロックダウン)などの対策がとられた結果、需給両面で影響が大きく現れ、事前に予想できない減産を余儀なくされた企業も多数あったと考えられる。
 その後、日本では緊急事態宣言は5月中に段階的解除が進み、25日で全面解除された。また諸外国でも経済活動再開の動きが進んでいる。こうした先の見通しの改善により、6月は企業の生産計画と生産実績の乖離は小さくなるのか、それとも引き続き生産計画と生産実績との間の乖離は大きくなるのか、次の6月調査の結果も注目される。

アニマルスピリッツ指標、東日本大震災時を下回る

 生産計画を、前年同月の実績と比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかを判断する一つの目安となる。
 6月の生産計画は、前年同月実績比マイナス18.9%となり、5か月連続で前年同月実績を下回ることになり、低下幅も非常に大きくなっている。さらに翌7月計画も前年同月実績比マイナス15.9%となっており、前年同月実績を大幅に下回る月が続き、企業マインドは引き続き非常に弱気であると判断される。

 また、1ヶ月前時点で調べた生産計画が、生産開始直前に調べた生産計画と比べ、どの程度変動したかを示す数値が予測修正率となる。
 6月の予測修正率はマイナス5.6%となり、9か月連続で、生産計画は下方修正されている。また5月ほどではないものの、引き続き大きく低下している。予測修正率からも、6月は企業が弱気となっている様子がみられる。

 生産計画を上方修正した企業数の割合から、下方修正した企業数の割合を引いた数値を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでいる。この指標は、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量るために活用している。
 6月調査結果では、アニマルスピリッツ指標はマイナス24.8となり、5月調査結果でのマイナス31.4から上昇に転じているものの、東日本大震災のあった2011年3月のマイナス16.1を下回る、大幅に低い状態が続いている。
 この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向が見られている。アニマルスピリッツ指標は8か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドで見てもマイナス5を下回るなど、生産マインドにかなりの弱さがみられる。

 6月調査では、強気の割合が増加、弱気の割合が減少したことにより、アニマルスピリッツ指標は上昇した。しかし、生産計画を下方修正した弱気の割合はいまだ半数近い状況となっており、この点からも、生産マインドにかなりの弱さがみられる。

 6月の調査結果では、前年同月実績比や予測修正率、アニマルスピリッツ指標の水準から、生産マインドは依然としてかなり弱気であるとみられる。ただ、5月調査と比べると、各指標のマイナス幅に縮小の動きが見られ、改善の兆しもみられる結果となった。
 こうした6月調査での各指標の動きは、日本をはじめ各国の経済活動再開に対する期待感の表れと考えられるが、他方で、その見通しには不確実性もある。生産の先行きや企業のマインドに関しては、今後の経済活動再開の動きとあわせて、引き続き注視していく必要がある。

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