統計解説

訪日外国人消費指数が一変 8年連続上昇から直近四半期は大幅下落


 訪日外国人消費指数(TCI)とは、訪日外国人の消費金額を、消費者物価指数を用いて実質指数化し、訪日外国人の国内での費目別の旅行消費の動向を指標化したものである。
 この度、基準年次を2010年基準から2015年基準へ改定した。この基準改定により、2010年1月からのすべてのデータが変更となった。
 今回は、基準改定後のTCI(2015年平均=100)から、2019年の動向と、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて注目される、2020年第1四半期のTCIの動向を紹介する。
 2019年のTCI(2015年平均=100)は、指数値が148.5、前年比5.1%と8年連続の上昇となった。

 ただし、2016年以降は上昇幅が縮小する傾向にある。名目値である旅行消費額も同様の動きであることから、物価要因ではなく、訪日外国人旅行客数の上昇幅が縮小する動きにちなんでいると考えられる。これに加えて、2018年までは1人当たり旅行支出額が縮小する傾向にあったことも影響したとみられる。2019年の1人当たり旅行支出額は、前年比3.6%と4年ぶりに上昇に転じたものの、TCIの上昇幅を再び拡大するまでには至らなかったようだ。

目立つ「飲食費」の上昇幅縮小

 費目別の指数の動向を見ると、2019年は全ての費目が前年比プラスとなった。しかし、2016年以降最も大きくプラスに寄与してきた「飲食費」が、2019年にはプラス幅を大きく縮めたことが目立つ。

 なお、近年の費目別指数の推移を見ると、主要費目の中では買物代の上昇に勢いが感じられなくなっている。訪日外国人の消費においては、モノの消費より、飲食費、宿泊代金、娯楽サービス費といったコト(経験)の消費の位置付けが増してきていたと考えられるが、その上昇寄与も近年縮小してきている。

 こうした訪日外国人消費の伸び悩みにより、国内における対個人向けサービスへの寄与もわずかなプラスに留まった。2019年の広義対個人向けサービス(第3次産業活動指数)の前年比0.5%に対し、TCIは0.1%ポイントのプラス寄与だった。2019年の対個人サービスの上昇は、国内居住者などの消費がけん引していたことがうかがえる。

新型コロナ、国内旅行にも甚大な影響

 2020年の第1四半期は、季節調整済指数値が87.6、同前期比マイナス43.4%と、大幅な下落となった。東日本大震災直後の2011年第2四半期の季節調整済前期比がマイナス44.9%だったことから、これに匹敵する、史上2番目の下落幅である。これは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、訪日外国人旅行客が激減したことによるものだ。訪日外客数(観光庁)は、1月は前年同月比マイナス1.1%だったが、2月はマイナス58.3%、3月はマイナス93.0%と大幅に減少した。今回のTCIの推計期間より先の話だが、4月、5月はマイナス99.9%となっており、2020年第2四半期への影響はさらに大きいと想定される。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は、海外からの旅行客のみならず、国内においても甚大で、国内における対個人向けサービス産業に二重に負の影響を及ぼすこととなった。2020年第1四半期の広義対個人向けサービス(第3次産業活動指数)の前期比マイナス1.8%に対し、訪日外国人消費指数はマイナス0.6%ポイントのマイナス寄与だった。第3次産業活動指数の広義対個人サービスは4月も続落している(前月比マイナス7.2%、3か月連続の低下)。

 新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、3月24日には今年7~9月に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックの開催が延期されることが決定した。新たな開催日程は1年後の2021年7~9月である。現在も入国制限が続いているため、当面、訪日外客数については激減の状況が続くと思われるが、今後、社会経済活動のレベルが引き上げられるに伴ってサービス産業が回復していくとともに、国をまたいだ移動も再び活性化し、訪日外国人消費がどう回復していくかにも注目していきたい。
 なお、下記のスライド資料には、費目別の寄与度など、より詳細な情報を掲載している。ご覧頂きたい。

(注)一般客(クルーズ客以外)の1人当たり旅行支出
 
【関連情報】

ミニ経済分析「2019年,2020年第1四半期の訪日外国人消費指数の動き」のページ

ミニ経済分析「2019年の訪日外国人消費指数は8年連続で上昇するも、上昇幅は縮小傾向。2020年第1四半期は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大幅下落。」のページ